アングル:劣化する独国防態勢、戦闘即応性はウクライナ侵攻前より低下
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ドイツ連邦軍の現在の戦闘即応性は、ロシアがウクライナ侵攻を開始した2022年当時よりも低下している――。写真はピストリウス国防相が視察する中、演習を行う独連邦陸軍の空挺旅団。2024年9月17日、独ザールルイスで撮影(2025年 ロイター/Thilo Schmuelgen)
Sabine Siebold
[ベルリン 13日 ロイター] - ドイツ連邦軍の現在の戦闘即応性は、ロシアがウクライナ侵攻を開始した2022年当時よりも低下している――。複数の軍当局者や議員、防衛専門家らがロイターに語った。
23日の総選挙後に誕生する次期政権が防衛支出を拡大したとしても、特に防空や砲兵部隊、兵員の不足はその後何年も足かせになりそうだという。
ドイツ連邦軍協会トップのアンドレ・ベストナー大佐はロイターのインタビューで「ロシアのウクライナ侵攻前、わが軍には即応性が約65%だった8個旅団があった」と説明した。
しかしベストナー氏は、その後ウクライナへの武器弾薬・装備供与やドイツ連邦軍自体の演習急増により、利用できる装備が逼迫(ひっぱく)したため「地上部隊の即応性は50%前後に下がってしまった」と嘆いた。
ショルツ首相はロシアのウクライナ侵攻後、弱体化したドイツの軍備を刷新すると宣言したが、それから3年を経ても事態は改善していない。それどころか今年と2027年までに約4万人の部隊を北大西洋条約機構(NATO)に提供するという約束は、非常に大きな逆風に直面している、というのが関係者の見方だ。
関係者が明かしたこのような状況は、トランプ米大統領の返り咲きによって欧州が地政学上の新たな時代を迎える中で、ドイツが危うい立場に置かれていることを浮き彫りにしている。
ロシアがNATOの東端部分に攻撃を仕掛けてきた場合、真っ先に反撃する地上部隊兵力の大部分を供出する役割を担うのがドイツとポーランドだ。
これを踏まえてショルツ氏が評した「時代の大転換」の下でのドイツ国防改革は、関係者によると国内の緊迫感の欠如や、調達システムの機能不全、資金難といった理由から今のところ進展していない。
関係者は、ドイツが今年初めまでに完全装備の部隊をNATOに提供できていないし、同部隊を支援する防空戦力も存在しないと指摘。27年までに提供を約束した部隊に至っては装備の充足率が20%程度に過ぎず、今から全てを発注しても期限までに整わないと、野党キリスト教民主同盟(CDU)議員で議会の予算委員会に属するインゴ・ゲデヒェン氏は解説した。
<トランプ氏の圧力>
トランプ氏は欧州に防衛費負担を増やすよう圧力をかけているほか、米政府内でウクライナの戦争終結交渉が話題になっているだけに、ドイツの軍備のぜい弱さはことさら注目を集める格好だ。またウクライナでの停戦が実現すれば、ドイツは停戦監視に必要な軍事面でのさらなる要求に直面するだろう。
ドイツの主要政党はいずれも、NATOが求める最低限の防衛支出である国内総生産(GDP)比2%を維持すると公約している。ただトランプ氏はNATOに支出を2倍以上に増やしてGDP比5%を目指してほしいと要望。NATO自体もGDP比3%への目標引き上げを検討中だ。
ドイツのピストリウス国防相は先月、連邦軍の即応態勢を確保するためにはGDP比3%の支出が必要になると述べたが、トランプ氏が呼びかけた5%はドイツ政府予算全体の4割を超えてしまうと訴えた。
27年以降は、ドイツ政府が従来の防衛予算と別枠で用意した1000億ユーロ(約16兆円)の特別基金も底をつくので、次期政権は厳しい局面に立たされるのは間違いない。ドイツが27年より先もGDP比2%の防衛支出を維持するには、年間約300億ユーロを手当てしなければならない。
ゲデヒェン氏は「目下はどこもかしこも問題だらけで、解決策は皆無だ」とこぼした。
議会の保守会派、キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)で防衛問題を担当するヨハン・バデフル氏はロイターに、最も顕著な問題は防空分野だと述べた。
防衛専門家によると、ウクライナの戦争では無人機(ドローン)と砲兵戦力の重要性が証明された。ところがドイツ連邦軍はそのどちらも対応が遅れている。
バデフル氏は無人機について「連邦軍には全く装備がない」と明かし、調達基準を緩和するとともに防衛支出をGDP比3%に引き上げるよう訴えた。
同氏やCDUは、11年に停止された徴兵制度の復活も求めている。
ショルツ氏の報道官は、国防改革が失敗しているとの見方には直接触れなかったが、2月のショルツ氏の演説に言及した。当時ショルツ氏は既に防衛予算の財源が不足しているのに、調達方法に関して国内で議論されていない状況に不満を示し、厳しい政府の借り入れ制限緩和に向けた合意が形成されなければならないと主張した。
ドイツ国防省は、連邦軍の戦闘即応性は機密情報だとしてコメントを拒否。ただ同省報道官は、ドイツは今年初め以降、NATO東端部分で連絡があり次第すぐに作戦を遂行できるだけの地上戦力を提供していると付け加えた。
NATOの報道官は、ショルツ氏の国防改革はドイツの安全保障やNATOの強さに大きな変化をもたらしており、ドイツにはまだやるべき課題はあるが防衛支出拡大は同国の最優先事項になっていると述べた。
<国民の意識が足かせ>
ロシアのプーチン大統領は軍が2方面の脅威に対応できるようにするため、総兵力を150万人に増強する取り組みを進めている。
一方ベストナー氏は、14年以降のロシア軍によるウクライナへの軍事力行使に対して欧州でドイツだけが鈍い反応をしたわけではないとしつつも「特に国民が『スヌーズ(アラームの一時停止)ボタン』を押した」と語り、防衛問題に対する国民の冷めた姿勢が改革の遅れに影響したと認めた。
実際1月に行われた世論調査では、次期政権にとって喫緊の課題としては国防よりも移民と経済が上位に挙げられた。
冷戦時代のドイツ(旧西ドイツ)の防衛支出はGDPの3-4.5%に上り、現役兵50万人と予備役80万人の態勢を維持していた。しかし現在の連邦軍は、18年に設定した20万3000人という目標兵力にいまだ到達しておらず、常設部隊では2万人ほど人員が不足しているという。
CDUのバデフル氏は、ドイツが戦闘即応性を備えるには現役兵25万人前後、予備役50万人が必要になるとみている。
最新の世論調査によると、総選挙後にはCDUと社会民主党(SPD)の連立政権が発足する公算が最も大きい。ただ極右や極左の政党が第3勢力の統一会派を組み、連邦軍への支出をするための新たな特別基金創設などに反対する可能性もある。
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