アングル:ペソ高で物価急騰、海外消費に走るアルゼンチン国民
アルゼンチンの人々が、チリのショッピングモールやブラジルのビーチで衣類や電子機器、定番のカクテルのカイピリーニャを買いあさっている。写真は、ビーチでサッカーをするアルゼンチンの少年。1月4日、チリのビニャ・デル・マールで撮影(2025年 ロイター/Rodrigo Garrido)
Eliana Raszewski Renato Spyrro
[サンチアゴ/リオデジャネイロ/ブエノスアイレス 6日 ロイター] - アルゼンチンの人々が、チリのショッピングモールやブラジルのビーチで衣類や電子機器、定番のカクテルのカイピリーニャを買いあさっている。アルゼンチン・ぺソの上昇により、国内物価がドル換算で急騰、海外で買い物をした方が安上がりな状況になっている。
アルゼンチン国民の大半はヤミ市場(並行市場)を利用して厳しい通貨統制を回避しているが、昨年下半期にはこうした非公式の並行レートが上昇し続けた。統制下の公式レートは下落したものの、下落のペースは3桁に及ぶインフレに比べてはるかに遅く、相対的に物価は上昇している。
「アルゼンチンでは何もかも高すぎて」と語るのは、コンサルタント会社エコゴー所属のエコノミストとしてブエノスアイレスで活動するマリーナ・ダルポゲット氏。同氏は、2023年半ばと比較して、今は実勢レートでペソが3倍に上昇したと推測する。当時のアルゼンチンは域内の訪問先としては割安な方だった。一方でブラジルの通貨レアルは過去最低水準にある。「今年はアルゼンチン人もブラジルで休暇を過ごすだろう」と、ダルポゲット氏は言う。
リオデジャネイロのマラカナン・サッカー場の外で、アルゼンチンのサンフアン州から来たフェルマンダ・モンターニョさんに話を聞くと、ペソ高の効果により、海外で休暇を過ごす方がコストパフォーマンスが良かったという。
「国内よりもここで休暇を過ごした方がはるかに安上がりだった」とモンターニョさん。もっと多くの品物を持ち帰るために大きなスーツケースを持ってこなかったことを後悔していると付け加えた。「昨日買い物に行ったが、家電製品の価格の違いに驚いた。飛行機で来たので多くは持ち帰れないけれど、ずっと安い」
こうした劇的な変化が生まれる契機となったのは、リバタリアン(自由至上主義者)のミレイ大統領が2023年末に就任し、厳格な緊縮政策を推進し、「赤字ゼロ」のコスト削減策を推進したことだ。ペソはこの10年間を他国通貨に後れをとっていたことでアルゼンチンは割安な国になっていた。ミレイ大統領の改革により、穀物生産主体のアルゼンチンの財政や疲弊した経済は安定し、痛みを伴う不況から回復しはじめた。インフレも沈静化に向かっている。 <ナイキのシューズ、ビッグマック、ランコム>
アルゼンチンでは長年にわたり、一部の商品の価格が通貨規制と高い税率によって歪められてきたが、現在ではほとんどすべての商品が以前よりも値上がりしている。
マクドナルドのビッグマックは、しばしば各国の物価を比較する指標として使われるが、アルゼンチンでは7600ペソ(公定為替レートでは7.37ドル=約1166円)、ブラジルでは4.49ドル、メキシコでは5.56ドル、ニューヨーク州ブルックリンでは6.89ドルだった。
クリスマス商戦期のチリのお店には、アルゼンチン人がリーバイスのジーンズやナイキのシューズを買うために殺到する。サンチアゴのショッピングモールでは、アルゼンチンから来たメラニー・ガラルザさんが「子どもの1人にここでナイキのアンクル・ブーツを買ってあげた。25ドルくらいで買えたが、同じものがアルゼンチンでは100-150ドルになってしまう」とこぼす。
ロイターの取材では、人気ブランド「スタンレー」の保温ボトルの場合、サンチアゴでは5万5000チリ・ペソ(約8860円)で買えるが、ブエノスアイレスでは14万0000アルゼンチン・ペソ(約21359円)になってしまう。「ランコム」のメイクアップクリームとフェイスクリームの限定セットの価格は、チリの160ドルに対してアルゼンチンでは726ドルと驚くほど高い。
マクドナルド、ナイキ、「ランコム」ブランドを保有するロレアル、米国に本社のあるスタンレーにコメントを要請したが、今のところ回答はない。
アルゼンチン・ペソの公式レートは昨年22%下落したが、その一方で、インフレ率は約118%と推定される。そのため、レストランや小売店、燃料などあらゆる価格が、ドル換算ではほんの数年前に比べて大幅に高くなっている。
枯渇しつつある外貨準備の維持に腐心しているアルゼンチン政府にとって、こうした傾向は頭痛の種になりかねない。アルゼンチンのサービス収支の赤字は、旅行者による航空運賃や海外での購買支出により10月に大幅増となった。またペソ高により、通貨切り下げ圧力も高まっている。
だが、ミレイ大統領は、短期的なコストが伴うとしても自由な市場という考え方を強く支持しており、より開かれた競争によって国内物価はいずれ下落に向かうと主張する。彼の政策は、長年の経済的混乱に疲れた国民の間で広く支持を集めている。
一方でアルゼンチン中央銀行は、匿名を条件に取材に応じた当局者によれば、現在のトレンドを静観しているという。この当局者は、アルゼンチン国民の海外消費は「想定内」であり、そうした消費の多くは闇市場で両替された民間資金によるもので、外貨準備にはダメージはないと話している。
旅行代理店デスペガルでアルゼンチン・ウルグアイを担当するゼネラルマネジャーのパウラ・クリスティ氏は、南半球の夏が本番を迎える中で、ペソ高の追い風にも乗って、ブラジルなど人気の海外スポットに引き寄せられるアルゼンチン人が増えていると話す。
ブエノスアイレスの空港でブラジル便の搭乗を待つセシリア・クグナソさんに聞くと、「この国の物価は高すぎる」と話した。「アルゼンチンでは何を買っても高い。ブラジルならほぼ半額なのに」(翻訳:エァクレーレン)
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