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グリーンランドのレアアース鉱床、米とデンマークが中国への売却けん制

2025年01月10日(金)15時37分

 米国とデンマークの当局者が昨年、グリーンランド最大のレアアース(希土類)鉱床の採掘を手掛けるタンブリーズ・マイニングに対し、グリーンランドに保有する鉱床の権利を中国関連企業に売却しないよう働きかけたことが分かった。写真は昨年7月、グリーンランドのイガリクで撮影(2025年 ロイター/Ida Marie Odgaard)

Melanie Burton Ernest Scheyder

[メルボルン/ヒューストン 9日 ロイター] - 米国とデンマークの当局者が昨年、グリーンランド最大のレアアース(希土類)鉱床の採掘を手掛けるタンブリーズ・マイニングに対し、グリーンランドに保有する鉱床の権利を中国関連企業に売却しないよう働きかけたことが分かった。タンブリーズのグレッグ・バーンズ最高経営責任者(CEO)がロイターに明らかにした。

トランプ米次期大統領は最近グリーンランドへの興味を再表明しているが、米当局が長期にわたって経済的な関心を抱いていたことが浮き彫りになった。

バーンズ氏は、米政府関係者がグリーンランド南部のプロジェクトを昨年2度訪問したとし、資金繰りに苦しんでいた非上場のタンブリーズに対して中国とつながりのある買い手に売却しないように繰り返しくぎを刺されたと表明した。

米国務省はコメント要請に直ちには応じなかった。ホワイトハウスはコメント要請に回答しなかった。デンマーク外務省はコメントを拒否した。

バーンズ氏は年内に完了予定の取引の一環として、米ニューヨークを拠点とするクリティカル・メタルズにタンブリーズを売却することを決めた。タンブリーズは2026年にもレアアース含有鉱物のユーディアライトを年間50万トン採掘することを目指している。

クリティカル・メタルズのトニー・セージCEOはロイターに対して「中国に売却しないようにという大きな圧力があった」と説明した。バーンズ氏は現金500万ドルと2億1100万ドル相当のクリティカル・メタルズ株での売却を受け入れたが、中国企業の提示額よりはるかに少なかったという。

バーンズ氏は、中国企業や他の企業からの買収提案は支払い方法が明確でなかったと説明した。

両氏はともに面会した関係者や、買収を提案した中国企業の社名は明らかにしなかった。

アナリストらは、以前は魅力的な投資債だと見なされていなかったレアアース採掘プロジェクトを取り巻く状況が、米国が関心を抱いたことで変化してきたとの見方を示した。

鉱物コンサルティング企業プロジェクトブルーの調査ディレクター、デビッド・メリマン氏は「タンブリーズの規模は大きいが、グレードと鉱物学的性質は、驚くほどのものではない」と述べた。

クリティカル・メタルズへのタンブリーズの売却は、米国当局がアフリカよりもグリーンランドでより多くの成功を収めたことを示している。鉱物資源に恵まれた中央アフリカの銅ベルトは中国が掌握しており、米国はそれを相殺しようと努めてきた。

ロンドンを拠点とするシンクタンク、ポーラー・リサーチ・アンド・ポリシー・イニシアティブのドウェイン・メネゼス代表は「グリーンランドは売り物ではないが、ビジネスにはオープンだ」とし、「グリーンランドは米国からの投資拡大を歓迎するだろう」と言及した。

中国のレアアース生産会社、盛和資源が筆頭株主の豪エナジー・トランジション・ミネラルズによるグリーンランドでのレアアース開発プロジェクトは、法的紛争が長引く中で停滞している。

トランプ氏の長男、ドナルド・トランプ・ジュニア氏は7日、プライベートでグリーンランドの主要都市ヌークを訪れた。これに対し、デンマークは自国の自治領であるグリーンランドは売り物ではないと繰り返し警告してきた。

クリティカル・メタルズは昨年、米国防総省に対してレアアース加工施設を建設する資金を申請したものの審査は停滞している。セージ氏はトランプ氏の就任後に協議が再開することを期待しており、政権移行チームから既に接触を受けたと明らかにした。セージ氏は「(レアアースを)米国に売却し、加工施設を米国に建設することについて米国と既に協議中だ」と語った。

ロイター
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