パキスタン、元首相の釈放を求める抗議デモ激化 数百人逮捕
収監されたパキスタンのイムラン・カーン元首相(72)の釈放を求める首都イスラマバード中心部での支持者らの抗議デモが11月26日に激化した。写真は、デモ参加者らに催涙弾を発射する治安部隊(2024年 ロイター/Akhtar Soomro)
Asif Shahzad Gibran Naiyyar Peshimam Charlotte Greenfield
[イスラマバード 26日 ロイター] - 収監されたパキスタンのイムラン・カーン元首相(72)の釈放を求める首都イスラマバード中心部での支持者らの抗議デモが26日に激化した。この日夜に治安部隊がデモ隊を鎮圧し、地元メディアによると数百人が逮捕された。
26日夜の鎮圧に取りかかる前の時点で、治安部隊の4人を含む少なくとも6人が死亡した。
カーン氏の妻が率いる数千人のデモ隊はイスラマバード中心部で数列の警備部隊を突破し、議会や政府機関、大使館などが集まる「レッドゾーン」と呼ばれる地域の入り口に集結した。
地元放送局のゲオニュースとARYによると、26日夜にイスラマバード中心部で照明が消され、治安部隊はデモ隊に対して催涙弾を発射。デモ隊のほぼ全員が解散した。
カーン氏の政党、パキスタン正義運動(PTI)は、2022年の政権追放後に汚職や暴力扇動など多くの罪に問われて昨年8月から刑務所に収監されているカーン氏が釈放されるまで、レッドゾーンで座り込みを続ける予定だと表明した。
ナクビ内相は報道陣に対し、治安部隊に対して武器を使い、重武装して市内での集会禁止令を破ったデモ隊とはいかなる交渉もしないと表明した。
シャリフ首相は、デモ隊の車列が突っ込んだことで治安部隊に死者が出たと非難して「これは平和的な抗議活動ではない。これは過激主義だ」とする声明を出した。
PTIのブハリ報道官は車列で治安部隊に突っ込んだ事実はないと否定し、この衝突でデモ参加者の2人が死亡、30人が負傷したと語った。死亡したデモ隊参加者のうち1人は射殺され、もう1人は車にひかれたと説明した。
国際人権団体のアムネスティ・インターナショナルは、政府はデモ参加者の権利を完全に保護し、軍に不当かつ過剰な権限を与えている「見かけたら撃て」との命令を直ちに撤回すべきだと訴えた。
カーン氏は刑務所からXに投稿し、支持者へのメッセージは最後まで闘うことだとして「私たちの要求が満たされるまで、私たちは引き下がらない」と書き込んだ。また、治安部隊が平和的な党員に発砲したと非難した。
ロイターの報道陣は、デモ参加者の一部が車を物色し、警察の施設に放火するのを目撃した。また、複数のメディア関係者は、デモ隊が2つの異なる場所でジャーナリストを襲撃して負傷させたと語った。
<最後の呼びかけ>
PTIはカーン氏の収監以来、釈放を求めて多くの抗議デモを起こしており、今回はカーン氏が「最後の呼びかけ」と訴えていた。
前回の今年10月のデモでは警官1人が死亡した。
当局者らは今回についてより規模が大きく、より暴力的だったとし、デモ隊は催涙ガス発射装置や鉄棒などで武装し、行進しながら木や草に火をつけていたと話した。ロイターの報道陣はデモ隊の周囲で発砲音を聞いたが、誰の仕業なのかは明らかではない。
混乱は投資家を動揺させており、パキスタン株式市場の主要株価指数(KSE)は26日に前日比3.57%と過去最高の下落率を記録した。
米シンクタンクのウィルソン・センターの南アジア研究所ディレクター、マイケル・クルーグマン氏は、今回の激しい抗議デモはカーン氏が広い支持基盤を強固に保っていることを示しているとして「交渉と譲歩による政治的解決こそが、この危機を脱する唯一の道だ」と指摘。ただ「これは何事においても最大主義的な立場をとる双方間の特に辛らつで個人的な対立だ」との見解も示した。