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アングル:中国国債利回り低下に急ブレーキ バブル懸念する当局が「介入」

2024年08月19日(月)09時53分

 中国で長期かつ大幅な国債利回りの低下に急ブレーキがかかりつつある。バブルを恐れる当局の「介入」が強まった足元では、価格が反落(利回りが上昇)し、売買高が減少している。写真は人民元紙幣。2020年2月撮影のイメージ写真(2024年 ロイター/Dado Ruvic/Illustration)

[上海 16日 ロイター] - 中国で長期かつ大幅な国債利回りの低下に急ブレーキがかかりつつある。バブルを恐れる当局の「介入」が強まった足元では、価格が反落(利回りが上昇)し、売買高が減少している。

さえない指標が続き、経済がさらに減速すると示唆されているため、本来なら金融緩和拡大期待を背景に国債買いが促されるはずだ。

しかし10年国債先物は、2週間の値下がり率が約1年ぶりの大きさを記録。国有銀行が大口の売り手に回り、人民銀行(中央銀行)系のメディアが伝える一方的な国債買いへの警告が影響を及ぼし始める中で、上場されている債券ファンドからは過去数日で急激に資金が流出したほか、運用資産に債券が含まれる富裕層向け金融商品は純資産価値がマイナスに転落した。

JPモルガン・アセット・マネジメントのアジア債券最高投資責任者を務めるジュリオ・カレガリ氏は「われわれがここで目にしているのは、人民銀行の新たな行動だ」と述べ、人民銀が国債利回り低下を抑える意向を見せていることや、今後数カ月は相当の国債新規発行が予定されている点から、数カ月にわたって中国国債の買い持ちを縮小していると明かした。

最終的には利回りが安定するシナリオが妥当だとみているカレガリ氏は「われわれ(のポジション)は中立に近づき、買い持ちの規模は小さくなっている」と話す。

過去2週間は、中国当局が資産バブルのリスクを唱え、新規債券ファンドのデュレーションを制限し、ブローカーや銀行の債券取引への監視を強化したため、長期国債の動向は注目の的になっていた。

浙商証券によると、1週間前の時点では純資産価値がマイナスとなった富裕層向け金融商品の本数が385と昨年3月以降で最多で、地合い悪化を示す材料はほかにもある。

例えば15日の新発10年国債の売買高は、先週の1日平均1220億元に対して、わずか309億元にとどまった。

アトランティス・ファイナンス・リサーチ・インスティテュートを率いるチャオ・ジャン氏は、経済が弱いのに当局が利回りを押し上げようとするのは「理解しがたい」と指摘。リスク低減が狙いなのだろうが、市場参加者の取引意欲をくじくことで市場機能を阻害し、結局は政府の資金調達や投資に悪影響を及ぼす公算が大きいと強調した。

<ボラティリティー増大か>

中国の国債利回り低下は何年も続く流れだった。まずゼロコロナ政策と不動産不況で経済成長が損なわれた後、コロナ禍後の景気回復は期待外れのままで、国債利回り低下が進んだからだ。

また国債の投資リターンが預金利率より高いので家計の資金を呼び込んだ上に、新規融資が15年ぶりの低水準に沈む銀行も手元に余った資金を国債に振り向けた。

ただ当局は、これがバブルにつながり、生産的に利用されるべき資金がどんどん国債に流入してしまうと懸念し、利回りを反転上昇させようとしている。

杭州銀行の富裕層資産運用部門は15日、中国の景気回復は低調なので利回りは上昇するよりも低下しやすいと分析しつつも、利回りが既に低水準にある以上、市場のボラティリティーは今後増大する見込みで、収益機会をつかむ準備をしていると説明した。

ロイター
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