日米の防空ミサイル増産協力、ボーイングの部品供給が障害=関係者
日本の生産能力を活用して防空ミサイル「PAC3」を増産しようという米国の計画が、米防衛大手ボーイングの部品供給不足で問題に直面していることが分かった。写真はPAC3迎撃ミサイルシステムの前を行進する自衛隊員。2017年10月、東京で撮影(2024年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
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[東京 20日 ロイター] - 日本の生産能力を活用して防空ミサイル「PAC3」を増産しようという米国の計画が、米防衛大手ボーイングの部品供給不足で問題に直面していることが分かった。事情を知る関係者4人が明らかにした。
米国はウクライナ支援で不足する弾薬の増産を急いでいるが、複雑な調達網(サプライチェーン)に同盟国の生産能力を取り込むことの難しさが浮き彫りになった。
PAC3は米ロッキード・マーチンが元請けメーカーとして手掛ける迎撃ミサイル。日本では三菱重工業が中心となって米国から技術を導入し、自衛隊向けに生産している。同関係者らによると、日本の生産数は年間30発程度。それほど大きな投資がなくても2倍程度に増やせそうだという。
ロッキードは、2027年までに年間生産を500発から650発へ引き上げようとしている。同計画に詳しい前出と別の関係者によると、米国はなるべく早期に世界全体で年間750発以上へ増やしたい考え。
日本は昨年12月、国内で生産したPAC3を米国へ輸出できるよう装備移転の指針を改訂した。さらに今年4月の日米首脳会談で、両国は防衛装備品の生産を強化するため協議体を設置することで合意した。6月に東京で1回目の会合を開き、PAC3など不足するミサイルの生産増強を具体的な協力項目の1つとした。
前出と別の関係者によると、エマニュエル駐日米大使は会合に出席した日米の防衛企業関係者に強く増産を要請したという。
問題は、シーカーと呼ばれる主要部品の供給が追いつかないことだと、事情を知る前出の関係者4人は話す。PAC3を目標へ誘導する「目」に当たる部品で、ボーイングが米国内で生産している。
「ミサイルのシーカーが増産のボトルネックになっている」と、関係者の1人は言う。「日本の増産には時間がかかるだろう」と語る。
ボーイングは昨年、シーカーを生産するアラバマ州の工場拡張に乗り出した。3割以上増やす計画だが、新しい生産ラインは27年まで稼働しない。同社は年間生産量を公表しておらず、昨年11月時点で累計出荷数が5000個に達したとしている。
ボーイングはロイターの取材に対し、元請けのロッキードに問い合わせるよう求めた。
日本が十分な量のシーカーを確保できても、60発よりさらに増産するには追加の設備投資が必要で、費用を誰が負担するのかが問題になる。日本政府は自衛隊向け武器・弾薬の生産投資には資金支援をするが、輸出向けの生産は相手先の要望などに合わせて仕様を変えるのにかかる費用を助成する枠組みしかない。
日本の防衛装備庁と三菱重工はロイターの取材にコメントを控えた。米国防総省は、自国と同盟国、パートナーを同時に防衛する十分な生産能力の確保に自信を持っていると回答した。ロッキードは、日本の生産については米国防総省、日本政府、三菱重工に問い合わせるようロイターに求めた。
日米は今月下旬、外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)を開く。防衛装備品の生産協力も議題の1つになる可能性がある。
(久保信博、Tim Kelly 取材協力:Mike Stone, Allison Lampert, Idrees Ali、金子かおり 編集:佐々木美和)