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安倍首相が3選、石破氏は254票と善戦 市場は政治基盤に注目

2018年09月20日(木)20時15分

 9月20日、自民党は午後、党本部で総裁選の投開票を実施した。安倍晋三首相が石破茂元幹事長を破り、連続3選が決まった。投票する同首相(左)。都内の自民党党本部で撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 20日 ロイター] - 自民党は20日午後、党本部で総裁選の投開票を実施した。安倍晋三首相が石破茂元幹事長を破り、連続3選が決まった。獲得票は安倍氏が553票、石破氏が254票で、安倍首相が主要派閥を押さえて圧勝した。ただ、石破陣営も目標とする200票を上回り善戦した。

政治的なリーダーシップに陰りが出かねないとみた市場参加者の反応で、日経平均.N225は一時、前日比マイナス圏で推移する局面もあった。

安倍首相は気候変動に対応した「強じんなふるさと作り」を標榜し、財政拡張的な政策スタンスをにじます一方、早期の憲法改正にも意欲を示し、憲政史上最長の政権維持に向け、政策課題の実行を全面に打ち出した。

ただ、石破氏の善戦で同陣営サイドを完全に排除する人事を断行することは難しくなったとの声も与党内にあり、安倍首相の前途には、様々なハードルが待ち受けている。

<地方票は安倍氏55%・石破氏45%>

安倍首相は国会議員票で329票、地方票で224票を獲得。石破氏は国会議員票73票、地方票181票を獲得した。投票は100万人強の党員・党友の票を換算しなおした地方票405、国会議員票405のうち合計807票の有効票で争った。

安倍首相陣営では、麻生派や二階派など主要派閥が早くから支持を表明し、議員票の8割を押さえ、圧勝を目指していた。

しかし、アベノミクスの恩恵が必ずしも及んでいない地方では、石破氏の人気も根強く、地方票では接戦となった。

与党内では、地方議員に対する安倍陣営による激しい締め付けが報道され、それが影響し、かえって石破票を伸ばしたとの分析も出ている。

安倍陣営は、もともと地方票の獲得目標として55%(222票)を掲げていた。その水準はクリアでき、目標は達成できたとの見方がある一方で、石破氏に45%の票を獲得されたことに対し、衝撃を受けていた関係者も少なくない。

石破氏の国会議員票は、自身の派閥と参院竹下派を中心に50人程度と予測されていた。だが、フタを開けてみれば、20人あまりが上積みされ、同党内では、地方議員票よりも国会議員票の獲得数に驚きが広がっていたとの見方もある。

こうした支持の広がりと小泉進次郎・筆頭副幹事長の支持表明がどの程度の関連性を持っているのか、両陣営とも分析を進めていくとみられる。

<日経平均一時90円安、安倍早期退陣リスク意識>

当初は「95対5の戦い」(竹下派)と見られていた石破氏が善戦したことで、日経平均は一時、前日比90円安付近まで下落した。

市場では「実質的な選挙期間が短くなり、各方面への締め付けも強かったとみられるなかでのこの数字は、安倍陣営にとって厳しい結果だ」(国内投信役員)との受け止めが多い。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券のシニアマーケットエコノミスト、六車治美氏は、石破氏の善戦により、自民党内で安倍首相の政治手法に対して批判をしやすくなったと指摘。「来年の選挙結果次第で、安倍首相が早期退陣を迫られるリスクシナリオを市場は、意識する必要もありそうだ」とみている。

<進次郎氏「総裁選は政治の世界の戦」>

20日朝に石破氏に投票するとの意向が明らかになった小泉進次郎筆頭副幹事長は結果判明後、記者団に対し「党内にさまざまな意見があることを示したかった」と述べ、石破氏に投票した理由を説明した。

同時に「総裁選は政治の世界の戦」とも表現し、ポスト安倍時代に向けて戦略的な判断であるとの考えも強くにじませた。

石破氏は、佐藤栄作政権に挑戦し続け、最終的に首相の座を射止めた三木武夫元首相について触れ「私と政治家の系譜は違うが、政治に対する思いが強いところを自分に重ねているところは確かにある」と明言。ポスト安倍への強い意欲を示した。

<安倍首相、「強じんなふるさと作り待ったなし」、補正予算提出へ>

一方、安倍首相は総裁選後の記者会見で、政府・日銀が政権発足時から掲げている2%の物価目標に関連し、今後3年間の任期中にデフレ脱却の道筋をしっかり付けていくとの見解を示した。

また、日銀の金融政策を含むマクロ政策の目標は、雇用の最大化であり、その目標には「矢が当たっている」とし、アベノミクスは全体として成功しているとの見方を示した。

安倍首相は、今後の優先課題として、防災のための国土強じん化を挙げ「強じんなふるさと作りは待ったなし、ただちに着手する」と述べたうえで、秋の臨時国会で補正予算を提出する意向を示した。

憲法改正についても、友党である公明党と調整しつつ、早期の実現を目指す方針を繰り返した。

総裁選を受けた党役員人事や閣僚人事は、国連総会出席のための訪米から帰国した後に行うとした。10月初旬とみられる。

人事については「しっかりした土台の上に、できるだけ幅広い人材を登用したい」とコメント。

総裁選で戦った石破茂元幹事長の陣営に属する議員を登用する可能性については「適材適所で処遇する」と述べるにとどめた。

*内容を更新しました。

(竹本能文 編集:田巻一彦 取材協力:伊賀大記)

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