インタビュー:昨秋以降にオープン・ヘッジ外債買い、トランプ相場で機動的判断=日本生命
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日本生命保険は、昨年10月に始まったトランプトレード以降の米金利上昇とドル高止まりを受け、オープン外債を積み増している。都築彰・執行役員財務企画部長が19日夕方、ロイターとのインタビューで明らかにした。写真は2009年7月に撮影(2025年 ロイター/Stringer)
Tomo Uetake
[東京 20日 ロイター] - 日本生命保険は、昨年10月に始まったトランプトレード以降の米金利上昇とドル高止まりを受け、オープン外債を積み増している。また為替のヘッジコストが低下していることから、ここ数年魅力が乏しくなっていたヘッジ付き外債への投資も再開し、両者を組み合わせた機動的な外債投資を開始した。
都築彰・執行役員財務企画部長が19日夕方、ロイターとのインタビューで明らかにした。
日本生命は昨年10月半ばに示した運用計画では、オープン外債は「横ばいか減少」、ヘッジ外債は「増やすがプライベートデット中心」としていた。
都築氏は「トランプ米政権の政策により米利下げが後ろ倒しになるリスクが出ており、急には円高に行かない可能性があるとみて為替のリスクも若干取れると判断。オープンとヘッジを機動的に組み合わせながら、外債をポートフォリオに入れ始めている」と述べた。
同社では当初、日米金利差縮小を受けて為替のドル円は年度末145円への下落を見込んでいたが、19日時点のレートは151.80円と依然円安基調。引き続き方向性は円高だとして公式な為替見通しは変えていないが、「米利下げペースが緩む可能性があり、円安の滞空時間はもう少し長くなりそうだ」(都築氏)という。
具体的な運用先に関しては、「米国に加え、具体的な国名は控えるが複数の欧州国債に投資している。これまで力を入れていたクレジットは、スプレッドがタイト化していて妙味が乏しい」とした。
日本生命ではヘッジコスト上昇を見込んでヘッジ外債を22年度に大量に売却しており、ポートフォリオに占める割合が非常に小さくなっていた。しかしドルのヘッジコストは年度初が5%台前半だったものが、足もとは4%近辺に低下。ユーロのコストも年度初4%近辺が、足元は2%台前半に低下している。
都築氏は25年度の運用方針はまだ議論中だとしつつも、「我々が買おうとしている米長期債はまだ利回りも高い。今のうちに仕込んでおけば、ヘッジコストが下がってきたこともあり、5年・10年のタームで見て非常に良い投資になると思う。次年度計画での積み増しも検討したい」と述べた。
同社の当初計画では、今年度末の米10年金利を3.80%と見込んでいたが、19日時点で4.57%と高止まりしている。
一方、円債については、日本生命が当初計画で示した見通し(10年金利で年度末1.4%、30年金利同2.0─2.5%)が的中。昨年10月にロイターが聴き取りを行った大手生保10社の中で最も高く、残り9社の10年金利予想はいずれも0.9─1.2%だった。
都築氏は「我々は当時、金利は日銀の利上げを十分織り込めていないと思っていた。その後の円金利は見通し通りの動きとなり、当社は年度上期の投資を遅らせた分、下期に金利が上昇(債券価格は下落)したところで順調に購入できている。年度を通じて平準買いするよりも、非常にうまいタイミングで投資できた」と振り返る。投資対象は引き続き、30年債を中心とする超長期債が中心。
日銀の金融政策見通しについては、今年6月─9月の間に1回、12月─来年3月の間に1回と、概ね半年に1回のペースで1.0%までの追加利上げを想定。それ以上は国内外の景気やインフレの状況をみての判断となり、時点ではターミナルレートの具体的な水準は想定していないという。
その上で、都築氏は25年度の円金利について「足もとの長期金利は上昇ペースが速いが、ここからは一本調子で上がるとは思っていない。1%台後半への上昇ではなく1%台半ばが居どころではないか。30年金利は2%台半ばというイメージだ」と述べ、19日時点の10年金利の1.435%、30年金利の2.330%からの上昇余地は限られるとの見方を示した。
(インタビュアー:植竹知子、Brigid Riley 編集:橋本浩)