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2月ロイター企業調査:トランプ氏の政策、8割超が経営に「マイナス」 関税を最も懸念

2025年02月20日(木)10時04分

 2月のロイター企業調査で、トランプ米大統領(写真)の政策が自社の経営に与える影響について聞いたところ、8割以上が「どちらかといえばマイナス」「マイナス」と答えた。2月10日、ワシントンで撮影(2025年 ロイター/Kevin Lamarque)

Tetsushi Kajimoto

[東京 20日 ロイター] - 2月のロイター企業調査で、トランプ米大統領の政策が自社の経営に与える影響について聞いたところ、8割以上が「どちらかといえばマイナス」「マイナス」と答えた。そのうち約4分の3が「関税引き上げ・通商政策」を、残りのほぼ全社が「米中貿易摩擦」を理由に挙げた。一方、8割の企業が対米投資や事業展開を変えるつもりはないと考えていることが分かった。

調査は2月4日ー14日に実施。調査票発送企業は505社、回答社数は233社だった。トランプ氏が相互関税の検討を関係省庁に指示したことは調査期間に含まれる一方、自動車関税の導入表明は含まれていない。

調査時点で明らかになった米大統領の政策が自社の経営環境にどう影響するかについて、82%の回答者が「どちらかといえばマイナス 」、4%が「マイナス」と答えた。「どちらかというとプラス」は13%、「プラス」は1%だった。

マイナスと回答した企業に最大の理由を聞いたところ、72%が関税引き上げ・通商政策を挙げた。残りはほぼ全て米中摩擦の激化を選んだ。

回答企業からは「サプライチェーンの組み直しを強いられ得る」(ゴム)、「他国から米国向け商品がだぶつき国際相場が変動する可能性があり、どのような影響があるか予測は難しい」(食品)、「米国への輸出環境(特にメキシコからの)の悪化を懸念」(輸送用機器)、「米国内の需要減が想定されドル安を招く」(小売)などの声が聞かれた。

「関税により世界的に自動車業界に打撃が生じると、半導体の売り上げにも影響が出る可能性がある」(電機)との見方もあった。

トランプ大統領は1月20日の就任後まもなくメキシコ、カナダへの関税(その後に発動延期)を表明、中国には2月10日に追加関税を発動した。13日に貿易相手国と同じ水準まで関税を引き上げる相互関税の検討を各省庁に指示、14日には自動車関税を4月2日ごろ導入する方針を明らかにした。自動車の税率は25%前後になるとしている。

トランプ氏は4月1日に省庁から検討結果を受ける予定で、相互関税や自動車関税の対象に日本も含まれるかは明らかにしていない。しかし、以前から日本との間に抱える8兆6400億円の貿易赤字を問題視している。

一方、「プラス」「どちらかといえばプラス」と答えた計14%の企業のうち、37%は化石燃料採掘促進を理由に挙げた。同じく37%が減税・規制緩和を選んだ。10%は電気自動車(EV)の普及方針撤回を選んだ。

トランプ政権の政策を不安視する企業が84%に上る一方、ほぼ同水準の80%の企業が今後の対米投資・事業展開の姿勢に「これまでと変わらない」と答えた。「従来より慎重」は16%、「従来以上に積極姿勢」は4%だった。

「為替が円高に振れる傾向にあり、輸入品ビジネスにとってはプラス」(小売)、「一部の顧客から米国生産への切り換えのために一時的な需要増の可能性がある」(紙・パルプ)、「直近では関税対策などで混乱を想定するものの、中期的には米国内景気浮揚策がプラスに影響すると想定」(機械)などの声が聞かれた。

慎重になると答えた企業のうち、米国に代わる事業の展開先として48%が東南アジアを挙げた。2位は日本で45%、3位はインドで42%だった。

「4年の在任期間は海外投資は慎重にならざるを得ない」(輸送用機器)との見方もあった。

(梶本哲史 グラフィック作成:照井裕子 編集:久保信博)

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