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2月ロイター企業調査:日銀の政策金利、4割超が「1%」で設備投資に悪影響

2025年02月20日(木)10時03分

 2月のロイター企業調査で、日銀がどこまで金利を引き上げたら設備投資に悪影響が出るか聞いたところ、「1%」との回答が44%で最多だった。写真は、日銀前を歩く男性。2024年3月、東京で撮影(2025年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

Tetsushi Kajimoto

[東京 20日 ロイター] - 2月のロイター企業調査で、日銀がどこまで金利を引き上げたら設備投資に悪影響が出るか聞いたところ、「1%」との回答が44%で最多だった。次いで多かったのは「1.5%超」で、全体の21%を占めた。昨年3月から3回利上げしたことによる経営への影響は48%が「あまりない」と答える一方、同じく48%が年内の追加利上げを望んでいなかった。

調査は2月4ー14日に実施。調査票発送企業は505社、回答社数は233社だった。

11%の企業が、現行の政策金利「0.5%」でも設備投資に悪影響があると答えた。「0.75%」でマイナス影響出ると答えたのは9%、「1.25%」は8%、「1.5%」は6%だった。

1%と回答した企業からは「金利上昇と並行して設備投資優遇策を拡充してほしい」(ゴム)、0.75%を選んだ企業からは「コロナ融資の返済も終わっていない状況で利上げは厳しい」(サービス)との声が聞かれた。

その他の水準を選んだ企業からは、「顧客の設備投資で事業が成り立っており、そちらの影響が大」(0.5%、建設)、「この辺まで来ると厳しい」(1.25%、運輸)、「借入コスト上昇による投資計画の再考を求められる可能性がある」(1.5%、運輸・公益)、「現状、支払い金利はそこまで負担になっていない」(1.5%超、化学)などの声があった。

日銀は植田和男総裁が就任して以降、昨年3月と7月、今年1月の計3回金利を引き上げた。自社の経営に影響があったか聞いたところ、「大いにある」が6%、「多少ある」が44%。「あまりない」の48%、「全く影響ない」の3%と拮抗した。

建設、不動産、卸売、サービス、繊維、化学、紙・パルプ、機械、など、幅広い業種の企業から資金調達コストが増加したとの指摘があった。「賃金上昇で相殺しきれない消費マインドへの悪影響」(小売)との声も出ていた。

一方、「円高進行の可能性が高まり、輸入食材を中心にプラス影響の可能性がある」(サービス)とこれまでの利上げを評価するコメントもあった。

日銀が1月に決定した直近の追加利上げについては、「円が過剰に安くなっているのでバランスを戻す必要がある」(食品)などとして61%が「適切」とみていた。しかし、次の利上げ時期については「来年以降」と「利上げは望まない」がそれぞれ24%ずつを占めた。

「日本はコストプッシュ型の物価高騰のため、賃上げ余力も限界があることから、これ以上の利上げは経済の停滞につながると思われる」(輸送用機器)との見方が出ていた。

「7─9月」が次の利上げ時期として望ましいとする回答も24%あった。「4─6月」は14%、「10─12月」は13%だった。

「年1─2回の利上げ実施により正常化を目指すシナリオは現日本経済にとって妥当と考える」(食品)、「『金利がある世界』がまっとうなので、耐えられない企業の退場、転換の機会ともなろう」(卸売)などの声があった。

日銀が1月24日の決定会合で0.5%へ政策金利を上げて以降、日本の長期金利は上昇ペースを強めている。18日には1.43%と2009年11月以来の水準をつけた。日銀の次の追加利上げ時期が早まるとの観測や、金利の最終到達点(ターミナルレート)が従来の想定より上振れるとの思惑が背景にある。

(梶本哲史 グラフィック作成:照井裕子 編集:久保信博)

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