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アングル:AI相場に突風、中国「ディープシーク」の実力は 懐疑的見方も

2025年01月27日(月)18時33分

 1月27日、東京株式市場では、半導体関連やAI(人工知能)関連と目される銘柄群が売り込まれた。2024年2月撮影(2025年 ロイター/Dado Ruvic)

Hiroko Hamada Noriyuki Hirata

[東京 27日 ロイター] - 27日の東京株式市場では、半導体関連やAI(人工知能)関連と目される銘柄群が売り込まれた。先週まで日経平均の上昇をけん引してきたが、中国の新興企業「ディープシーク(DeepSeek)」が公開した新しいAIモデルの台頭が材料視された。ディープシークのAIモデルは従来に比べ低コストで済むとされ、大型投資の必要性が薄れるのではないかとの懸念が急浮上した。一方、その実力には懐疑的な見方も出ている。

<ハイテク株軒並み安、アドテストやSBGが8%超安>

27日の取引ではハイテク関連の下げが重しとなり、日経平均は前営業日比366円安と続落した。アドバンテスト、ソフトバンクグループは8%超安、フジクラが10%超安、古河電気工業が11%超安となり、指数を押し下げた。東証33業種では、構成銘柄にフジクラや古河電工がある非鉄金属が5%安で下落率トップだった。

市場では「先週の上昇の勢いが大きかった反動で、利益確定売りが強まったようだ」(国内証券ストラテジスト)との声が聞かれた。下げ基調に拍車をかけたのが、ディープシークのAIモデルの台頭だ。松井証券のシニアマーケットアナリスト・窪田朋一郎氏は、ディープシークに関する情報が正しければ「AIバブルは崩壊の瀬戸際に入っているかもしれない」との見方を示す。

ディープシークは先月末、米オープンAIやメタ・プラットフォームズに匹敵する大規模な言語モデルを、その数分の1のコストで訓練したと発表した。杭州で2023年に創業した新興企業だが、その背後にいる企業はほとんど知られていない。

AI関連投資をめぐっては先週、ソフトバンクGなどによる米国での巨額投資が発表され、トランプ米大統領も支援する姿勢を示していたが、低コストでAIの機械学習が済むとなれば「従来の、グラフィックプロセッサー(GPU)やデータセンターへの投資が無駄になり、半導体関連株やデータセンター株は投資の縮小リスクを考えなければならない可能性も出てきた」(松井証券・窪田氏)という。

<情報不足、普及に懐疑的な声も>

一方、オムディアのシニアディレクター・南川明氏は、ディープシークに関してはまだ情報が足りず「本当に安く実現できたかは(個人的には)まだ確信がもてない」と話す。現在はAI開発に巨額な投資が必要で、これを低減させていく方向性は確かだとみているが「ガラッと変わるとは常識的には考えにくい」(南川氏)という。

中国製AIの普及に懐疑的な意見もある。岩井コスモ証券の斎藤和嘉シニアアナリストは、欧米の主要国では安全保障の面から中国への情報漏洩のリスクが意識されやすいとみており「(既存のAIの)脅威になることはないのではないか」と指摘する。

今週はマイクロソフトやメタ・プラットフォームズ、アップルなど米国の大手ハイテク企業の決算発表を控え、関係者が発言しにくいタイミングであることが株価の独り歩きにつながった側面があると斎藤氏は指摘する。

ディープシークの実力について市場の見方がまだ定まっていない中で「利益確定売りの口実にされた」と、auカブコム証券のチーフストラテジスト・河合達憲氏はみる。

目先は「今後の決算での米大手ハイテク企業からのコメントが重要になりそうだ」と、岩井コスモの斎藤氏は話している。

(浜田寛子、平田紀之 編集:橋本浩)

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