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アングル:トランプ×AI、レンジ突破の火付け役か 4万円定着は決算で見極め

2025年01月23日(木)17時12分

 1月23日、AI(人工知能)を巡るトランプ米大統領の政策転換が日本株市場の火付け役になっている。都内の株価ボード前で2024年8月撮影(2025年 ロイター/Willy Kurniawan)

Noriyuki Hirata

[東京 23日 ロイター] - AI(人工知能)を巡るトランプ米大統領の政策転換が日本株市場の火付け役になっている。欧米株と比べた出遅れ感もあり、昨年秋から続くレンジ相場を上抜ける可能性が出てきた、との楽観論も聞かれ始めた。一方で、水準修正が進む過程では利益確定売りが出やすく、日経平均が4万円を超えて定着できるか見極めるには、これから始まる企業決算が重要になる。

23日の東京市場では日経平均が一時4万円を回復した。ソフトバンクグループなどによる米国での巨額のAIインフラ投資が引き続き、刺激材料になった。AIはテーマ化して2年ほど経過し、関連株には割高感も意識されるが「巨額投資への期待から(人気が)再燃した」(岩井コスモ証券の清水範一シニアアナリスト)という。

傘下の英半導体設計大手アーム株の急騰もあってソフトバンクG株が連日の大商いとなった。AI関連の筆頭格となるアドバンテストも堅調。光ファイバーなどデータセンター向け製品群を持つフジクラも連日高となった。電力需要を見越して発電関連を手掛ける三菱重工業や日立製作所にも思惑が広がった。

りそなアセットマネジメントの戸田浩司ファンドマネージャーは、巨額のAI投資を手掛かりにした株高は「持続性があるのかはわからない」とみている。一方、日経平均の4万円回復には違和感はないと話す。「トランプ氏の政策や日銀の追加利上げの懸念は先週までに十二分に織り込んだ。想定を超えない限り、それを理由には売れない」という。

欧米株に対する出遅れ感からは、見直し買いが入ってもおかしくないと戸田氏はみている。「米株が調整すればつれ安するだろうが、米株が今の水準を維持できるなら、日経平均のレンジ上抜けは不思議ではない」という。

<トランプリスク、物色に濃淡>

関連株が一様に物色されたわけでもない。

東京エレクトロンはマイナスの時間帯が長く、アドバンテストに値動きで見劣りした。トランプ氏が21日、中国からの輸入品に2月1日から10%の関税を課すことを検討していると明らかにしたことが重しになった。中国向けの売上高は、アドバンテストが2─3割なのに対し、東京エレクトロンは4─5割と高い。

一方、目を引いたのがフジクラの強さだ。昨年の春先以降に人気化して株価は約6倍となり、PER(株価収益率)は30倍台で「個人が買いにくい水準」(国内証券のアナリスト)とされる。ただ、「急成長分野のため(高いPERは)許容範囲といえる」(岩井コスモの清水氏)との見方もある。北米を中心にデータセンター向けが堅調で、25年3月期の営業利益は5割増を見込む。

成長分野では、高関税政策の影響を受けにくいともみられている。データセンター市場向けを4割含む情報通信事業の上期の売上高では、中国向けは全体の1割に満たず、北米向けは約8割となる。米国向けは米国内での生産体制を整えてもいる。同社では「データセンター向け光ファイバーなど関連製品の需要は増加傾向が継続する見込みで、付加価値のある製品群で利益成長につなげられるとみている」と想定している。「投資の流れが変わらなければ、26年3月期も増益を継続する可能性がある」(岩井コスモの清水氏)という。

<大台定着、良好な決算が必要条件>

日経平均のPERは前日終値時点で15.84倍となっており、直近のレンジの上限付近にある。4万円の大台で定着して下値を切り上げるには、1株利益(EPS)の向上が重要になると、三木証券の北沢淳商品部投資情報グループ次長は話す。

東京市場では、きょうから製造業を中心とした決算シーズンが始まる。

7―9月決算は、期間中の円高進行が利益の重しとなって不発となった。同決算の発表前は株価の急落や米大統領選の先行き不透明感から、企業が上方修正を控えたり様子見をしやすかったとみられている。今回発表される10―12月期は円安への揺り戻しがあるほか、米経済が当初の想定より堅調とみられており、好決算への期待感が市場にはある。

EPSが切り上がれば、バリュエーションは低下して過熱感が落ち着き、ボックス圏を上抜けるシナリオも考え得ると北沢氏はみており「(経営陣による)来期への前向きなコメントを期待したい」と話している。

(平田紀之 編集:橋本浩)

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