アングル:トランプ氏の関税公約で注目集める5つの市場、当面動揺継続か
中国や欧州、カナダ、メキシコなど世界各地の市場は、トランプ次期米大統領(写真)の就任を20日に控えて、既にトランプ氏が掲げる関税引き上げの公約に揺れている。写真は2024年10月、米ペンシルベニア州アレンタウンで撮影(2024年 ロイター/Brendan McDermid)
[ロンドン 8日 ロイター] - 中国や欧州、カナダ、メキシコなど世界各地の市場は、トランプ次期米大統領の就任を20日に控えて、既にトランプ氏が掲げる関税引き上げの公約に揺れている。
トランプ氏は中国製品に60%の関税を、そのほかの国・地域に一律10%の関税を課すほか、カナダとメキシコからの輸入に25%の関税を課す方針を打ち出している。専門家によると、こうした措置は貿易の流れを大きく変え、コストを押し上げ、報復を招く恐れがある。
最終的な関税引き上げの規模や範囲はまだ明らかになっていないが、今後大きな混乱が起きると予想されている。現時点で注目を集めているいくつかの市場について関税引き上げの影響などをまとめた。
(1)中国
ゴールドマン・サックスは「中国はトランプ貿易戦争2.0の主な標的となる可能性が高い」と指摘している。投資家はこうした展開を見込んで先手を打っており、中国の証券取引所と中央銀行は人民元と株価の下落への対応を余儀なくされている。
人民元は対ドルで16カ月ぶりの安値に沈み、当局が防衛ラインとしていた1ドル=7.3元を割り込んでいる。バークレイズは人民元が今年末までに人民元が7.5元まで下落し、米国が60%の関税を課すシナリオでは8.4元にまで下げる可能性があると予測している。
まだ関税が引き上げられていないにもかかわらず、中国は景気の低迷によって国債利回りが低下して米国債との利回り差が拡大し、人民元を圧迫している。
アナリストによると、中国は輸出業者が関税引き上げの影響に対処できるように人民元の一段の下落を容認するものの、下落は緩やかなペースにとどめる見通しだ。
人民元が突然として急落すれば、くすぶっている資本流出の懸念が表面化し、週間で2年ぶりの大幅な下落を記録した株式市場は信認が一段と揺らぎそうだ。ベトナムやマレーシアなどアジアの他の主要輸出国の投資家も神経を尖らせている。
(2)ユーロ圏
ユーロは米大統領選以降、対ドルで5%余りも下落して2年ぶりの安値である1ユーロ=1.03ドル近辺を付けるなど、主要通貨の中で最も大きく下げた通貨の1つだ。
JPモルガンとラボバンクは、関税を巡る不透明感が重しとなる中、ユーロは年内に重要な節目である1ユーロ=1ドルまで下げる可能性があると予想している。
米国は欧州連合(EU)にとって最も重要な貿易相手国であり、双方の財とサービスの貿易総額は1兆7000億ドルに上る。
市場は、欧州中央銀行(ECB)が低迷する経済を支えるため、年内に100ベーシスポイント(bp)の利下げを行うと見込んでいる
一方、米国は関税引き上げによってインフレが押し上げられる可能性があることから、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ幅は40bpにとどまり、対ユーロでドルの魅力が高まると予想されている。
中国経済の低迷も欧州にとって逆風だ。INGの為替ストラテジスト、フランチェスコ・ペソレ氏は、中国とEUが同時に関税引き上げの影響を受けるのはユーロにとって「非常に毒性の高い組み合わせ」になり得るとの見方を示した。
(3)自動車
欧州では自動車株が特に関税関連の報道に敏感に反応している。6日には、トランプ次期米大統領の側近は国家安全保障や経済安全保障に重要な特定分野の輸入品にのみ関税を課すことを検討していると米紙ワシントン・ポストが報じると、STOXX欧州600種自動車・部品株指数は一時5%近く急騰した。しかしその後、トランプ氏が記事内容を否定すると同指数は下げに転じた。自動車関連株のこうした値動きは、低迷する自動車セクターが投資家の注目の的になっていることを示している。同セクターの株価は2024年4月に付けた高値から約25%下落し、相対的なバリュエーションも急激に低下している。
バークレイズの欧州株式戦略責任者のエマニュエル・カウ氏は、貿易に大きく依存する消費財セクターの中でも自動車を注視しているという。
ユーロ圏の景気の弱さによって欧州株の低迷が長引く可能性もある。昨年の上昇率はSTOXX600指数が6%だったのに対してS&P500指数は23%に達しており、欧州が大きく見劣りした。
(4)カナダドル
カナダドルは昨年11月にトランプ氏が、薬物と移民の取り締まりが強化されるまでカナダとメキシコに25%の関税を課すと表明すると、大幅に下落して約4年ぶりの安値圏となり、今後さらに下げる可能性もある。
ゴールドマン・サックスのアナリストによると、市場はこのような関税が導入される可能性を約5%程度しか織り込んでいない。関税が実際に導入されることはなさそうだと見られているとしても、貿易交渉が長引けば関税リスクは残り続けるだろう。
INGのペソレ氏は、本格的な貿易戦争でカナダが追加利下げを迫られた場合、カナダドルは米ドルに対して1.50カナダドルにまで下げるかもしれないと見ている。これは現行水準から約5%の下落だ。
カナダはトルドー首相の辞任で見通しが一段と困難になっている。
(5)メキシコペソ
メキシコペソは昨年トランプ氏が大統領選で勝利した時点で、年初来でドルに対して16%下げており、ドルにとっての好材料とペソにとっての悪材料の多くが織り込まれていた。
ペソは2024年全体では対ドルで18.6%下落し、年間では2008年以来の大幅な下げを記録した。最大の貿易相手国である米国が関税を引き上げる恐れがあるほか、物議を醸した司法改革もペソ相場に影響した。
6日のワシントン・ポストの報道を受けてペソは一時2%上昇したが、その後は上昇幅を縮小した。メキシコとの貿易がトランプ氏の標的となり続ける中、メキシコペソはボラティリティーの高い状態が続く可能性があることが浮き彫りになった。
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