日鉄とUSスチール、買収巡り米同業が投資家に疑念拡散と指摘
1月5日、日本製鉄による米鉄鋼大手USスチール買収計画を巡り、米同業クリーブランド・クリフスのローレンソ・ゴンカルベス最高経営責任者(CEO)が投資家に対し、成立の見込みに繰り返し疑問を投げかけていたことが分かった。写真はインディアナ州ゲーリーにあるUSスチールの高炉。2024年12月撮影(2025年 ロイター/Vincent Alban)
Alexandra Alper
[ワシントン 5日 ロイター] - 日本製鉄による米鉄鋼大手USスチール買収計画を巡り、米同業クリーブランド・クリフスのローレンソ・ゴンカルベス最高経営責任者(CEO)が投資家に対し、成立の見込みに繰り返し疑問を投げかけていたことが分かった。
日鉄とUSスチールの弁護士が買収を審査する対米外国投資委員会(CFIUS)に送った昨年12月17日付の書簡によると、ゴンカルベス氏は少なくとも9回の投資家向け電話会議で、バイデン米大統領が日鉄によるUSスチール買収を阻止すると断言していた。会議参加者2人も確認した。
クリーブランド・クリフスは2023年8月、USスチールに70億ドルで買収を提案したが、USスチール側は独占禁止法上の懸念などを理由に拒否した。
書簡によると、ゴンカルベス氏はJPモルガンが主催した昨年3月13日の電話会議で「私に身売りするようUSスチールに強いることはできないが、私が賛同しない取引を成立させないよう魔法をかけることはできる」とし、「(買収は)成立しない。バイデン氏はまだ発言していないが、今後するだろう」と述べた。
バイデン氏はこの翌日、買収への反対を表明した。
ゴンカルベス氏はコメントを控えた。クリーブランド・クリフスはコメント要請に返答していない。日鉄とCFIUSを率いる米財務省もコメントを控えた。USスチールは買収成立に向けて引き続き取り組むと表明。ホワイトハウスはバイデン大統領の買収阻止決定にゴンカルベス氏の発言は影響していないと述べた。
JPモルガンは昨年3月の電話会議を要約した顧客メモでゴンカルベス氏の発言に言及し、「(クリーブランド・クリフス)経営陣は(日鉄によるUSスチール)買収が成立しないとの見方を改めて示した」と記している。会議に参加した1人も、バイデン氏が近く買収に反対するとゴンカルベス氏が予想したことを確認した。
ゴンカルベス氏は3回の決算説明会で同様のコメントをしたほか、買収手続きを巡り昨年を通じて私的な発言を繰り返すなど、取引に疑問を投げかけようとしていたことがうかがえる。日鉄とUSスチールの書簡によると、同氏の発言後にUSスチールの株価が下落したケースもあったという。
クリーブランド・クリフスは以前、USスチールへの買収再提案に関心を示している。
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