戒厳令騒動で「コリアディスカウント」一段と、韓国投資に冷水
12月4日、韓国投資に関し「コリアディスカウント」という言葉がある。写真は同日、ソウルの駅で戒厳令関連のニュースを伝えるテレビを見る人(2024年 ロイター/Kim Soo-hyeon)
Ankur Banerjee Vidya Ranganathan
[シンガポール 4日 ロイター] - 韓国投資に関し「コリアディスカウント」という言葉がある。特に韓国株が相対的に低く評価されていることを指し、韓国政府は「コリアディスカウント」返上に向けた施策を打ち出していた。だが、皮肉にも尹錫悦大統領が引き起こした「戒厳令騒動」がコリアディスカウントの一段の浸透を招いたとの声が投資家から出ている。
3日夜の戒厳令発令を受け、夜間に通貨ウォンは2年ぶり安値に急落した。戒厳令は4日早朝に解除され、政府・中央銀行が市場安定化に乗り出したため、ウォンも韓国株も落ち着きを取り戻した。ただ投資家心理への影響は大きい。
グラスホッパー・アセット・マネジメント(シンガポール)のポートフォリオマネジャー、ダニエル・タン氏は、戒厳令を巡る混乱でコリアディスカウントが顕著になったと指摘。「投資家はウォンや韓国株への投資に、より大きなリスクプレミアムを要求する可能性がある」と述べた。
コリアディスカウントの要因は複数ある。最たるものが北朝鮮リスクで、同族経営の財閥が支配するビジネス環境もある。今年、新たに中国リスクが加わり、ウォンが9%下落し、韓国株は7%下落していた。
市場がアンダーパフォームし割安なら、投資妙味が出るはずだ。しかし投資家はかねてコリアディスカウントを警戒しており、今回の混乱で警戒感が強まったとジャナス・ヘンダーソンのアジア配当インカム担当ポートフォリオ・マネジャー、サト・ドゥフラ氏と話す。同氏も「この不透明な状況で韓国に投資するつもりはない」という。
8月以降、韓国株式市場からは海外マネーが140億ドル超流出。高利回り債が受け皿になっていたが、今回の騒動が尹大統領の弾劾、解散総選挙につながれば、投資家は債券からも資金を引き揚げる可能性がある。
当局の下支えで、とりあえず下げ止まったウォンも先行きは不透明。INGのアジア太平洋地域リサーチ責任者ロブ・カーネル氏は「目先的に、ウォンが特に好調に推移するのは難しいと考えざるを得ない。構造的な問題、国内経済の低迷、中銀の緩和強化観測。そこに政治的な不安が加わった」と指摘した。