アングル:仮想通貨市場に高揚感、米財務長官人事などに注目 急変を警戒
暗号資産(仮想通貨)に投資するヘッジファンド、アシンメトリックの創業者ジョー・マッキャン氏は、米大統領選の開票結果が次々に判明する中、ビットコイン取引で点滅するスクリーンに釘付けになっていた。写真はパリで2017年撮影(2024年 ロイター/Benoit Tessier)
Lisa Pauline Mattackal Shashwat Chauhan
[19日 ロイター] - 暗号資産(仮想通貨)に投資するヘッジファンド、アシンメトリックの創業者ジョー・マッキャン氏は、米大統領選の開票結果が次々に判明する中、ビットコイン取引で点滅するスクリーンに釘付けになっていた。
「投票が終了し始めると、米国で大量の買いが入った。それ以降、買いが止まらない。仮想通貨市場は現在、高揚感に包まれている」とマッキャン氏は語る。
事実、ビットコインは今月5日以降32%以上急騰し、9万1000ドルを突破、史上最高値を記録した。トランプ次期米大統領がデジタル資産への支援を公約に掲げており、トレーダーの間で規制緩和への期待が膨らんでいることが背景だ。
世界最大の仮想通貨取引所バイナンスでは、今月6─13日のビットコインの1日平均取引高が約4億9300万ドルに急増。仮想通貨分析会社カイコによると、これは今年の平均である2億5200万ドルの2倍近い水準だ。大手仮想通貨引所コインベースでは、同期間中の1日平均取引高が1億0800万ドルを超え、今年の平均の3倍に達した。
一方、コインシェアーズによると、機関投資家の間で人気が高い米上場のビットコイン現物ETF(上場投資信託)は今月7日、1日としては過去最高となる14億3000万ドルの純資金流入を記録した。
だが、市場心理の指標となるコイングラス算出のビットコイン「恐怖・貪欲指数」は確実に貪欲ゾーンに入っており、多くの市場関係者は今後数週間で利益確定や相場の調整でやけどを負うリスクを警戒している。
ライズ・ラボのマネジングパートナー、マシュー・グレアム氏は「今後、一定の混乱が予想される。トランプ次期政権が、今よりもバランスの取れた規制体制を意味するのか、無法地帯を意味するのか、もしくはトランプ氏が仮想通貨そのものを完全に忘れてしまうのか、有力者にコネのある非常に洗練された市場参加者でさえ、分析を迫られている」と述べた。
<時価総額が3兆ドル突破>
確かに市場は不安定になっている。
ザ・ブロックのデータによると、ビットコインの30日間ボラティリティー(年率換算)は58%を超え、9月以来の高水準となった。6月時点では25%まで低下していた。
CoinGeckoによると、仮想通貨市場の時価総額は過去最高の3兆1600億ドルに急増。コイングラスののデータによると、デリバティブ取引所の建玉は1020億ドルを超え、過去最高を記録した。
イーサリアムも大統領選後に32%急騰。DeFi(分散型金融)トークンの時価総額は930億ドルと、5カ月ぶりの高水準に達した。
だが、大統領選直後の市場の興奮ぶりにもかかわらず、政権交代で具体的に何が変わるのか、詳細はまだ明らかになっていない。
トレーダーは仮想通貨を支持する人物が財務長官に起用されるかなどに注目。ビットゲット・リサーチのチーフアナリスト、ライアン・リー氏は「この人事が短期的な投機取引を引き起こす可能性がある」とし、相場の急変に引き続き警戒するようトレーダーに呼びかけている。