ニュース速報
ビジネス

スト実施のドイツ労組、5.5%賃上げを受け入れ

2024年11月13日(水)09時57分

 数万人規模のストライキを実施したドイツ最大の産業別労働組合、IGメタルは11月12日、会社側が提示した25カ月間で5.5%賃上げする労働協約を受け入れると発表した。10月30日、ボルフスブルクで撮影(2024年 ロイター/Axel Schmidt)

Alexander Hübner

[ミュンヘン/フランクフルト 12日 ロイター] - 数万人規模のストライキを実施したドイツ最大の産業別労働組合、IGメタルは12日、会社側が提示した25カ月間で5.5%賃上げする労働協約を受け入れると発表した。自動車大手のメルセデス・ベンツ、BMW、機械大手のシーメンス、鉄鋼大手のティッセンクルップなどの労働者約390万人が対象となり、ストに終止符を打つ。

シーメンスは労組との合意を歓迎し、広報担当者は「妥協案はシーメンスが実施できる限界ではあるものの、当社が予想した範囲内だ」とコメントした。一方、ドイツの10月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で2.4%上昇しており、欧州中央銀行(ECB)はインフレへの影響を注視している。

IGメタルのバイエルン地方支部と沿岸の地方支部は、今回の労働協約によって労働者は2025年4月に2%、26年4月に3.1%のそれぞれ賃上げを受けることになると明らかにした。

賃上げ幅は労組が求めていた7%には及ばないものの、会社側が提示した27カ月間で3.6%を上回った。22年終盤の前回の合意では、2年間で8.5%の賃上げで合意していた。

また、来年2月までに労働者は600ユーロ(637ドル)の一時金を受け取り、訓練生の手当は来年1月から月140ユーロ上昇する。

この労働協約は通常、労使交渉の対象となる産業部門の全国の労働者に適用される。

<VWへの影響>

エコノミストらは中国との貿易摩擦や、米大統領選で勝利したトランプ次期大統領が就任後の不透明感による逆風に直面しているドイツで、賃上げ幅が抑えられたことを歓迎した。

INGのチーフエコノミスト、カーステン・ブルゼスキ氏は「今回の合意は購買力の低下を補うための大幅な賃上げから転換し、雇用安定に向かうことを明確に示している」としつつ、「本当に長期的な雇用確保につながるかどうかは、今後の経済情勢を見極める必要がある」と指摘した。

自動車大手のフォルクスワーゲン(VW)は、賃金と工場閉鎖を巡る3回目の労使交渉を今月21日に控えている。VWは、フォルクスワーゲンブランド部門の労働者に対して人件費が高すぎるとして10%の賃下げを求めている。

VWの広報担当者によると、今回の労使交渉の対象には、閉鎖の危機に瀕していると広く見られている工場の1つであるオスナブリュック工場の労働者も含まれる。広報担当者は「私たちにはコスト負担ではなくコスト軽減が必要であり、そのための提案をしている」と表明した。

しかし、7万人を超える組合員が11日の労組要求を支持してデモをしたり、数時間にわたってストを実施したりしており、今回の合意でより広い分野でストが実施される可能性はなくなった。

デモ参加者には南部インゴルシュタットにあるVWのアウディ部門の約1万5000人の従業員やBMW、VWグループのトレイトン傘下のマン・トラック&バスの労働者も含まれた。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米国務長官指名のルビオ氏、イランやベネズエラ制裁強

ワールド

米大統領選で注目の賭けサイトCEO宅捜索、電話や電

ビジネス

世界の高級品売上高2%減予想、値上がりや景気不透明

ワールド

日米韓首脳会談、ペルー開催で最終調整=林官房長官
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:またトラ
特集:またトラ
2024年11月19日号(11/12発売)

なぜドナルド・トランプは圧勝で再選したのか。世界と経済と戦争をどう変えるのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 2
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 3
    NewJeansのミン・ヒジン激怒 「似ている」グループは企画案から瓜二つだった
  • 4
    本当に「怠慢」のせい? ヤンキース・コールがベース…
  • 5
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    中国の言う「台湾は中国」は本当か......世界が中国…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    トランプ再選を祝うロシアの国営テレビがなぜ?笑い…
  • 10
    ウクライナ軍ドローン、1000キロ離れたロシア拠点に…
  • 1
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 2
    「歌声が聞こえない」...ライブを台無しにする絶叫ファンはK-POPの「掛け声」に学べ
  • 3
    ウクライナ軍ドローン、1000キロ離れたロシア拠点に突っ込む瞬間映像...カスピ海で初の攻撃
  • 4
    「遮熱・断熱効果が10年持続」 窓ガラス用「次世代…
  • 5
    「トイレにヘビ!」家の便器から現れた侵入者、その…
  • 6
    本当に「怠慢」のせい? ヤンキース・コールがベース…
  • 7
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 8
    後ろの女性がやたらと近い...投票の列に並ぶ男性を困…
  • 9
    海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦「空母化」、米…
  • 10
    NewJeansのミン・ヒジン激怒 「似ている」グループは企…
  • 1
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 2
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 3
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の北朝鮮兵による「ブリヤート特別大隊」を待つ激戦地
  • 4
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 5
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 6
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 7
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    予算オーバー、目的地に届かず中断...イギリス高速鉄…
  • 10
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中