企業向けサービス価格、8月は2.7%上昇と伸び横ばい 労働関連が拡大
日銀が9月25日に公表した8月の企業向けサービス価格指数速報は前年比2.7%上昇、前月比では0.1%上昇した。日銀本店前で3月18日撮影(2024年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
Tetsushi Kajimoto
[東京 25日 ロイター] - 日銀が25日に公表した8月の企業向けサービス価格指数は前年比2.7%上昇し、伸び率は前月から変わらなかった。海運市況下落の影響で外航貨物輸送が押し下げたものの、人件費の上昇を価格に転嫁する動きが続く中で、職業紹介サービスや労働者派遣サービスが伸び率を拡大した。
前年比プラスは42カ月連続で、指数は107.6。前月比では0.1%上昇だった。
企業物価指数を構成している146品目中、上昇は113品目、下落は17品目となった。
外航貨物輸送は中国経済の減速から荷動きが鈍化し、海運市況にも下落が生じた。為替円高の影響もあり、前年比マイナス転化した。
道路旅客輸送のハイヤー、タクシーは前年のタクシー運賃引き上げ改定の裏要因で、貸し切りバスはコロナ禍から5類感染症へ移行して初の夏休みを迎えた前年との比較で伸び率が縮小した。
一方、労働者派遣サービスや職業紹介サービス、道路貨物輸送などが伸び率を拡大した。
民間エコノミストの中には、人件費が上昇する局面では消費者物価のサービス指数より企業向けサービス価格の方に早く反映される傾向があることから、後者により注目しているという声もある。
企業向けサービス価格指数のうち、高人件費率サービス指数は人件費を主なコストとしてどの程度サービス価格が上がっているかを示しており、労働需給と価格の相関関係が高い。前年比での指数の伸びは今年初めは2%前半だったが、5月・6月は3.0%上昇に伸びが拡大、7月・8月は共に前年比2.8%上昇、前月比0.1%上昇となった。
BNPパリバ証券のシニアエコノミスト、加藤あずさ氏は「高人件費率は春先から大きく上がっており、日銀にとっては(物価動向は)オントラックであるということが確認できた」と指摘し、データが「日銀の追加利上げの支援材料になる」とみている。
追加利上げについては、10月に急いで行う必要はないものの「植田日銀総裁はサービス値上げを注視していると改めて発言しており、それを確認した上で、年内でも年明け早々にでもできるということだと解釈している」(加藤氏)という。
企業向けサービス価格指数は企業間で取引されるサービスの価格動向を示すもので、今年5月分から2020年基準に移行した。