焦点:中国3中全会、政策継続性重視に広がる懐疑的見方
経済の不均衡が深まる中、7月18日閉幕した中国共産党第20期中央委員会第3回全体会議(3中全会)では10年前の政策目標が再確認されたが、これに対し実現に向けた懐疑的な見方が広がっている。写真はこの会議に出席した習近平国家主席のニュース映像。北京で撮影(2024年 ロイター/Tingshu Wang)
Joe Cash Kevin Yao
[北京 22日 ロイター] - 経済の不均衡が深まる中、18日閉幕した中国共産党第20期中央委員会第3回全体会議(3中全会)では10年前の政策目標が再確認されたが、これに対し実現に向けた懐疑的な見方が広がっている。
中国経済はデフレ圧力と内需低迷に直面、海外では輸出に対する警戒感が高まっていることから、3中全会は構造的な転換よりも政策の継続を選択した。
ナティクシスのアジア太平洋地域チーフエコノミスト、アリシア・ガルシア・エレロ氏は3中全会について「国内外の今後の問題を考えると、改革という点では明らかにゲームチェンジャーにはならなかった。中国当局はお茶を濁すことを好んでいるかのようだが、問題は対処しなければならない課題が増えたことだ」と述べた。
エコノミストは、公共部門のビジネス環境の改善、資源配分における市場の決定的役割の付与、税収増加といった公約の進展は歓迎する一方、実現は確信していない。
今回の3中全会の議題は、2013年に発表されたものからの逸脱が限定的だった。当時は将来の成長への自信を膨らませ、習近平国家主席を世界の投資家の目に改革者として位置付けた。
しかしエコノミストの多くは、当局が15年の株価急落後に資本規制を強化、近年はハイテク、金融などへの取り締まりを拡大し、市場自由化と民間部門に関して正反対の方向に進んでいると主張する。
内需拡大、農村と都市の格差の原因とされる毛沢東時代の制度の改革、農村部の土地の権利強化、社会保障の改善などの公約は、少なくとも13年からあったものだ。
エコノミストは、実績の乏しい政策課題を再び打ち出すことで政府は10年前にはなかった信頼性の欠如に直面しており、企業や消費者の信頼感回復には早急な行動が必要だと主張する。
3中全会は通常、実施時期をあいまいにするが、今回は29年までに課題を完了する方針を打ち出した。それでも投資家の反応はさえない。
中国銀行の首席研究員のZong Liang氏は「市場の期待を変えるのは簡単ではない」と指摘。
3中全会は前向きな道筋を示したが、トランプ氏の米大統領返り咲きなどの「厄介な外部環境」で中国国内の改革派の声が弱まる可能性があると懸念した。
<長引く不安>
13年との大きな違いの一つは、今回の3中全会の議題が「新たな質の生産力」に重点を置いていることだ。これは習主席が昨年提唱したスローガンで、科学的な研究と進歩革新を通じて製造業を現代化し、新たな高成長時代を促進することを意味する。
中国は、ハイテク輸出製品が新たな成長の原動力となり、インフラ投資のリターン減少や不動産バブル崩壊後の損失拡大を補うことを期待している。
これに対し欧米諸国は、中国政府がさまざな分野における過剰生産で輸出製品の価格を押し下げ、世界の製造業の雇用を脅かしていると非難している。
またエコノミストも、中国は海外市場や債務を膨らませる投資への依存を減らし、内需刺激を重視すべきと主張。消費者主導の発展モデルが長期的な成長可能性にとって不可欠だと指摘している。
ただHSBCのアジア担当チーフエコノミスト、フレデリック・ノイマン氏は「劇的な変化」を期待する世界の投資家が政策の「漸進的な」改変に失望する可能性を指摘する一方、楽観的な見方を示した。
重要な違いは、13年の政策課題は習主席が前任者から受け継いだ目標を反映したものだったが、今回の3中全会は習氏が全面的に支持したもので、より強力に実行される可能性が高まったことだという。
ノイマン氏は、半年程度は改革の動向を見極める必要があるとする一方で、投資家の忍耐は限界に近づいていると警告した。