ニュース速報
ビジネス

焦点:中国3中全会、政策継続性重視に広がる懐疑的見方

2024年07月24日(水)18時18分

 経済の不均衡が深まる中、7月18日閉幕した中国共産党第20期中央委員会第3回全体会議(3中全会)では10年前の政策目標が再確認されたが、これに対し実現に向けた懐疑的な見方が広がっている。写真はこの会議に出席した習近平国家主席のニュース映像。北京で撮影(2024年 ロイター/Tingshu Wang)

Joe Cash Kevin Yao

[北京 22日 ロイター] - 経済の不均衡が深まる中、18日閉幕した中国共産党第20期中央委員会第3回全体会議(3中全会)では10年前の政策目標が再確認されたが、これに対し実現に向けた懐疑的な見方が広がっている。

中国経済はデフレ圧力と内需低迷に直面、海外では輸出に対する警戒感が高まっていることから、3中全会は構造的な転換よりも政策の継続を選択した。

ナティクシスのアジア太平洋地域チーフエコノミスト、アリシア・ガルシア・エレロ氏は3中全会について「国内外の今後の問題を考えると、改革という点では明らかにゲームチェンジャーにはならなかった。中国当局はお茶を濁すことを好んでいるかのようだが、問題は対処しなければならない課題が増えたことだ」と述べた。

エコノミストは、公共部門のビジネス環境の改善、資源配分における市場の決定的役割の付与、税収増加といった公約の進展は歓迎する一方、実現は確信していない。

今回の3中全会の議題は、2013年に発表されたものからの逸脱が限定的だった。当時は将来の成長への自信を膨らませ、習近平国家主席を世界の投資家の目に改革者として位置付けた。

しかしエコノミストの多くは、当局が15年の株価急落後に資本規制を強化、近年はハイテク、金融などへの取り締まりを拡大し、市場自由化と民間部門に関して正反対の方向に進んでいると主張する。

内需拡大、農村と都市の格差の原因とされる毛沢東時代の制度の改革、農村部の土地の権利強化、社会保障の改善などの公約は、少なくとも13年からあったものだ。

エコノミストは、実績の乏しい政策課題を再び打ち出すことで政府は10年前にはなかった信頼性の欠如に直面しており、企業や消費者の信頼感回復には早急な行動が必要だと主張する。

3中全会は通常、実施時期をあいまいにするが、今回は29年までに課題を完了する方針を打ち出した。それでも投資家の反応はさえない。

中国銀行の首席研究員のZong Liang氏は「市場の期待を変えるのは簡単ではない」と指摘。

3中全会は前向きな道筋を示したが、トランプ氏の米大統領返り咲きなどの「厄介な外部環境」で中国国内の改革派の声が弱まる可能性があると懸念した。

<長引く不安>

13年との大きな違いの一つは、今回の3中全会の議題が「新たな質の生産力」に重点を置いていることだ。これは習主席が昨年提唱したスローガンで、科学的な研究と進歩革新を通じて製造業を現代化し、新たな高成長時代を促進することを意味する。

中国は、ハイテク輸出製品が新たな成長の原動力となり、インフラ投資のリターン減少や不動産バブル崩壊後の損失拡大を補うことを期待している。

これに対し欧米諸国は、中国政府がさまざな分野における過剰生産で輸出製品の価格を押し下げ、世界の製造業の雇用を脅かしていると非難している。

またエコノミストも、中国は海外市場や債務を膨らませる投資への依存を減らし、内需刺激を重視すべきと主張。消費者主導の発展モデルが長期的な成長可能性にとって不可欠だと指摘している。

ただHSBCのアジア担当チーフエコノミスト、フレデリック・ノイマン氏は「劇的な変化」を期待する世界の投資家が政策の「漸進的な」改変に失望する可能性を指摘する一方、楽観的な見方を示した。

重要な違いは、13年の政策課題は習主席が前任者から受け継いだ目標を反映したものだったが、今回の3中全会は習氏が全面的に支持したもので、より強力に実行される可能性が高まったことだという。

ノイマン氏は、半年程度は改革の動向を見極める必要があるとする一方で、投資家の忍耐は限界に近づいていると警告した。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

EXCLUSIVE-中国、欧州EV関税支持国への投

ビジネス

中国10月製造業PMI、6カ月ぶりに50上回る 刺

ビジネス

再送-中国BYD、第3四半期は増収増益 売上高はテ

ビジネス

商船三井、通期の純利益予想を上方修正 営業益は小幅
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:米大統領選と日本経済
特集:米大統領選と日本経済
2024年11月 5日/2024年11月12日号(10/29発売)

トランプ vs ハリスの結果次第で日本の金利・為替・景気はここまで変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴出! 屈辱動画がウクライナで拡散中
  • 2
    幻のドレス再び? 「青と黒」「白と金」論争に終止符を打つ「本当の色」とは
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    世界がいよいよ「中国を見捨てる」?...デフレ習近平…
  • 5
    北朝鮮軍とロシア軍「悪夢のコラボ」の本当の目的は…
  • 6
    娘は薬半錠で中毒死、パートナーは拳銃自殺──「フェ…
  • 7
    米供与戦車が「ロシア領内」で躍動...森に潜む敵に容…
  • 8
    カミラ王妃はなぜ、いきなり泣き出したのか?...「笑…
  • 9
    キャンピングカーに住んで半年「月40万円の節約に」…
  • 10
    衆院選敗北、石破政権の「弱体化」が日本経済にとっ…
  • 1
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 2
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴出! 屈辱動画がウクライナで拡散中
  • 3
    キャンピングカーに住んで半年「月40万円の節約に」全長10メートルの生活の魅力を語る
  • 4
    2027年で製造「禁止」に...蛍光灯がなくなったら一体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、和製英語ではないものはどれ?…
  • 6
    渡り鳥の渡り、実は無駄...? 長年の定説覆す新研究
  • 7
    北朝鮮を頼って韓国を怒らせたプーチンの大誤算
  • 8
    幻のドレス再び? 「青と黒」「白と金」論争に終止符…
  • 9
    世界がいよいよ「中国を見捨てる」?...デフレ習近平…
  • 10
    「決して真似しないで」...マッターホルン山頂「細す…
  • 1
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 2
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 3
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 6
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 7
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 8
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はど…
  • 9
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料…
  • 10
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中