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トヨタに立ち入り検査、5社が認証不正 出荷停止で経済に不透明要因

2024年06月04日(火)17時44分

6月4日、国土交通省は愛知県豊田市にあるトヨタ自動車本社を立ち入り検査する。写真はトヨタのロゴ。東京モーターショーの会場で2019年10月撮影(2024年 ロイター/Soe Zeya Tun)

Nobuhiro Kubo Ritsuko Shimizu Maki Shiraki

[東京 4日 ロイター] - 自動車メーカーなど5社で型式の認証不正があった問題で、国土交通省は4日午前、愛知県豊田市にあるトヨタ自動車本社を立ち入り検査した。残り4社も検査する方針で、行政処分を検討する[L4N3I115X]。6車種が出荷停止となり、日本経済の新たな不透明要因になる可能性がある。

斉藤鉄夫国土交通相は4日午前の閣議後会見で、「国民の安全・安心の確保を大前提として厳正に対処していくことはもちろんだが、経済への影響を最小限に抑える観点からも国交省として努めていきたい」と語った。

ダイハツ工業や豊田自動織機で認証不正が相次いだことを受け、完成車メーカーなど85社に調査を求めていた国交省は3日、トヨタ、ホンダ、マツダ、ヤマハ発動機、スズキから型式指定の申請で不正行為の報告を受けたと発表した。対象は計38車種で、うちトヨタとマツダ、ヤマハ発は現在生産する6車種について、基準適合性が確認できるまで出荷を一時停止した。

トヨタは再開時期が見通せない中、3車種の出荷を暫定的に6月末まで停める。生産は6日から停止する。同社広報は「当局に丁寧に説明し、速やかに立ち会い試験などの必要な対応を行う」としている。

斉藤国交相は4日午前の会見で、「ダイハツ工業の不正事案に比べ、対象となる車種や生産台数は限定的であると認識している」と語る一方、「出荷停止による経済への影響を低減する観点からも、基準適合性の確認試験を速やかに行う」と述べた。

1─3月期の国内総生産(GDP)は、ダイハツと豊田自動織機の生産・出荷停止が響き年率2.0%減となった。4─6月期はこの特殊要因が消え、市場はプラス成長を見込んでいた。

経済への影響について、専門家の見方は分かれる。みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介主席エコノミストは、出荷停止になった車種の生産がすべて止まった場合、月1─2万台の影響が出ると試算。月間の国内生産台数60万─70万台に比べると減産規模は軽微とみる。伊藤忠経済研究所の武田淳チーフエコノミストも「不正問題は深刻だが、経済への影響は極めて限定的だと思う。今回の対象車種は過去の車種がほとんどで、生産・出荷停止も他の車種で代替可能」と語る。

一方、第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストは「自動車産業は裾野が広く、今回は一部車種ではあるが、生産面では自動車の減産のみならず下請けメーカーの生産にも影響が出る可能性がある」と指摘。「消費者も新車購入をためらう可能性があるだろう。影響は無視できない」と話す。

自動車産業を所管する経済産業省は3日、部品メーカーなどへの影響を速やかに調査し、必要な対策を検討すると発表した。斎藤健経済産業相は4日午後の閣議後会見で、「資金繰りなど必要な対策を検討していく」とした。

円安などで物価高が続く中、政府は6月に定額減税を実施して家計の可処分所得を下支えしようとしている。岸田文雄首相は4日午後の政府与党連絡会議で「定額減税で手取り増の効果実感してもらい、消費者マインド喚起し、さらなる投資や賃上げにつながる経済好循環実現する」と改めて語った。

野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「円安・物価高で個人消費が弱い基調を続ける中、自動車認証不正による生産下押しは所得を通じで消費が回復するきっかけを遠のかせる」とみる。「個人消費の持ち直しのきっかけが見えにくくなった」と話す。

ロイター
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