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USスチールの米国での成長、日鉄による買収が一番と確信=今井新社長

2024年04月01日(月)06時28分

 日本製鉄の今井正新社長は、USスチールの買収について「USスチールが米国で成長するために一番役に立てるのは日鉄だと確信がある」と強調し、買収をクロージングさせることに集中すると述べた。写真は、米ペンシルベニア州にあるUSスチールの工場。2022年11月4日に撮影(2024年 ロイター/Quinn Glabicki)

Ritsuko Shimizu

[東京 1日 ロイター] - 日本製鉄の今井正新社長は、USスチールの買収について「USスチールが米国で成長するために一番役に立てるのは日鉄だと確信がある」と強調し、買収をクロージングさせることに集中すると述べた。買収に向けては、全米鉄鋼労働組合(USW)との交渉を誠実に続けていくことが重要との考えを改めて示した。

また、脱炭素に関連し、九州製鉄所八幡地区(福岡県北九州市)・瀬戸内製鉄所広畑地区(兵庫県姫路市)での電炉投資について「大きな判断をする時期が近付いている」と述べた。

USスチールの買収については、米国内で政治問題化している。今井氏は「米政治家が気にしているのは雇用やUSスチールが米国で象徴的な米企業として発展していけるかどうか」と指摘したうえで、USスチール成長のための投資や競争力向上について交渉の相手となる全米鉄鋼労働組合(USW)に誠実に話をすることが「一番重要だし、それしかないと思っている」と述べた。

USスチールの競争力向上については、日鉄が持つ高級鋼である電磁鋼板など全ての技術が使えるようになるなどのメリットを繰り返した。日鉄は北米で約2000件の特許を持っており、200件程度の米鉄鋼会社と比べても、技術力強化になるとした。

「USスチールは米国所有で運営されるべき」というバイデン米大統領の声明に関しては「日鉄は長く米国で製鉄事業を行っている、米国に根付いている鉄鋼会社であると是非見てほしい」と述べた。100%取得というスキームを変更する可能性については「今回のディールはあくまで100%の買収ということで手を挙げて選ばれている」と述べ、買収のスキームを決めるのはUSスチールの経営陣との考えを示した。仮にそういう提案があった場合には「具体的になった時にあらためて考える」と述べるにとどめた。

同社は、グローバル粗鋼1億トン・連結事業利益1兆円を目標に掲げている。インドや東南アジア諸国連合(ASEAN)に加え、USスチールの買収が上手くいけば「成長マーケットで数量的にも収益的にも拡大していくという戦略は軌道に乗って、1億トン・1兆円という数字も手の内に入る」と述べた。

USスチール買収が失敗に終わった場合の代替プランを問われ「USスチール買収をクロージングさせることに集中している状況」としたうえで「当社の技術が生かされる成長市場でグローバルに事業を一環で展開していく海外事業の方針は変わらない。M&Aが中心になる以上、常にそういう成長のチャンスをウオッチしていく」とした。

同社は脱炭素化に向け、高炉プロセスから電炉プロセスへの転換を進めようとしており、2030年までの大型電炉建設を目指し、八幡と広畑での投資の検討を行っている。今井社長は「建設工期を踏まえると、今年度から来年度にかけてGOサインを出さないと2030年に間に合わない」と述べ、技術的な確からしさと投資の回収の予見性について判断する時期が近付いているとした。

今井氏は、自身が社長に選ばれたのは「脱炭素を前に進める意思の表れだと思うし、使命感を持ってやっていかなければならない」と語った。

今井氏は88年4月に新日鉄に入社。23年に副社長となり、グリーン・トランスフォーメーション推進本部長、電炉プロセス推進プロジェクトリーダーを担った。4月1日付で社長兼最高執行責任者(COO)に就任した。

*3月25日に記者団の取材に応じた。

ロイター
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