ニュース速報

ビジネス

アングル:米5月雇用統計、FRB政策変更の討議加速化に不十分

2021年06月05日(土)04時01分

6月4日、米労働省が発表した5月の雇用統計で非農業部門雇用者数が前月比55万9000人増加し、連邦準備理事会(FRB)が金融政策変更の前提としている「大幅な進展」に一歩近づいた可能性がある。ただ、政策変更に向けた討議を加速化させるに十分ではないとの見方が大勢だ。写真は2019年3月、ワシントンのFRB (2021年 ロイター/Leah Millis)

[ワシントン 4日 ロイター] - 米労働省が4日に発表した5月の雇用統計で非農業部門雇用者数が前月比55万9000人増加し、連邦準備理事会(FRB)が金融政策変更の前提としている「大幅な進展」に一歩近づいた可能性がある。ただ、政策変更に向けた討議を加速化させるに十分ではないとの見方が大勢だ。

FRBは昨年12月、労働市場の改善に向け「一段の大幅な進展」が見られるまで超緩和的な政策の引き揚げに着手しないと表明した。

当時、米国の雇用の増加ペースは新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)発生前の水準を約1000万人下回っていたが、その後、回復できたのはこの4分の1程度。5月の55万9000人増は、市場予想の65万人に届かず、760万人の雇用が失われたままになっているほか、労働参加率もなお低い。[nL3N2NM3BL

クリーブランド地区連銀のメスター総裁は今回の雇用統計を受け、CNBCに対し「堅調な内容だったが、一段の進展を望んでいる」と述べている。

バンク・オブ・アメリカ(BofA)のエコノミスト、ミシェル・メイヤー氏とジョセフ・ソン氏は今回の雇用統計について「FRBがテーパリング(量的緩和の縮小)の実際の開始はまだかなり先になると明確に示しながら、その準備に向け、引き続き極めて慎重に、一歩ずつ進んでいくことを示している」との見方を示した。

FRBは15─16日の連邦公開市場委員会(FOMC)にも、月額1200億ドルの債券買い入れをいつ、どのようにして縮小していくか、討議を開始する可能性がある。ただアナリストの間では、8月26─28日にワイオミング州のジャクソンホールで開かれる経済シンポジウムまで何も決定されず、買い入れペースの実際の変更は来年まで実施されないとの見方が大勢だ。

こうした中、雇用が期待されたほど速く回復していない一方、インフレが予想以上に上昇していることで、事態が複雑化する可能性がある。これにより、FRBは雇用水準が十分でない中でも、早期の金融引き締めを迫られる恐れがある。5月の雇用統計では賃金が予想より大きく伸びた。将来的に物価圧力が高まる可能性がある。

エバーコアISIのクリシュナ・グハ副会長は、予想を下回る雇用の伸び、労働参加率の低迷、賃金の上昇という組み合わせはFRBにとって居心地が悪いものだが、6月にテーパリングを巡る討議を開始するとの見通しを変えるに十分なものではないと指摘。今回の雇用統計はテーパリングを巡る討議を「加速化させるものでも、阻むものでもなかった」との見方を示した。

(Howard Schneider記者)

ロイター
Copyright (C) 2021 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア産天然ガスの欧州向け輸出、今年は18─20%

ビジネス

日経平均は小幅反発、クリスマスや年末で見送りムード

ビジネス

日産、11月世界販売1.3%減で8カ月連続マイナス

ワールド

バイデン米大統領、政権移行を前に50の法案に署名 
MAGAZINE
特集:ISSUES 2025
特集:ISSUES 2025
2024年12月31日/2025年1月 7日号(12/24発売)

トランプ2.0/中東&ウクライナ戦争/米経済/中国経済/AI......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシアの都市カザンを自爆攻撃
  • 3
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリスマストイが「誇り高く立っている」と話題
  • 4
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 5
    9割が生活保護...日雇い労働者の街ではなくなった山…
  • 6
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 7
    「自由に生きたかった」アルミ缶を売り、生計を立て…
  • 8
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 9
    韓国Z世代の人気ラッパー、イ・ヨンジが語った「Small …
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
  • 4
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医…
  • 5
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達し…
  • 6
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシ…
  • 7
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 8
    9割が生活保護...日雇い労働者の街ではなくなった山…
  • 9
    【駐日ジョージア大使・特別寄稿】ジョージアでは今、…
  • 10
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 4
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 5
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 6
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 7
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 8
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 9
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、…
  • 10
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達し…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中