ニュース速報

ビジネス

長崎県の地銀統合、経営余力あるうちに承認を=金融庁検討会議

2018年04月11日(水)20時04分

 4月11日、金融庁の「金融仲介の改善に向けた検討会議」は、地域金融の課題と競争のあり方についての報告書を公表した。写真は昨年6月撮影(2018年 ロイター/Issei Kato)

[東京 11日 ロイター] - 金融庁の「金融仲介の改善に向けた検討会議」(座長=村本孜・成城大学社会イノベーション学部教授)は11日、地域金融の課題と競争のあり方についての報告書を公表した。その中で、長崎県を地盤とする十八銀行<8396.T>とふくおかフィナンシャルグループ(FFG)<8354.T>の統合計画について、経営余力のあるうちに承認し、地域に貢献する方が望ましいと指摘。統合を認めていない公正取引委員会をけん制した。

報告書は、両行が統合後も地域に貢献するよう金融庁がモニタリングし、寡占の弊害が認められる場合は是正させる必要があるとしている。

報告書はまた、地方銀行の厳しい経営環境に言及。2016年3月末のデータを用いて、都道府県で貸出・手数料ビジネスの収益が2行分の営業経費の合計を上回るかどうかの試算を掲載。2行での競争が可能な地域は10府県にとどまる一方、1行単独でも不採算となる府県は23に上った。

一方、報告書には、公取委の審査上の着眼点への反論が多く盛り込まれた。地銀の県内貸出シェアと金利変化幅に相関は認められず、県内シェアだけで市場支配力の有無は判断できないと指摘した。

公取委はふくおか・十八銀に統合後のシェアを低減するための問題解消措置を求め、両社は債権譲渡を検討しているが、金融庁と福岡財務支局が長崎県内の99の中小企業を対象に聞き取り調査を実施。報告書によると、64の事業者が債権譲渡に不安があると答えた。

企業結合審査に当たり、金融を特別視しない方針の公取委に対し、検討会議の報告書は、国際通貨基金(IMF)の論文などを引用して金融機関間の競争を考える際には金融システムの安定性確保の視点も重要だと指摘した。

報告書は、新しい競争政策のあり方を政府全体で議論すべきだと踏み込んだ。金融庁参与を務める大庫直樹・ルートエフ代表取締役は11日の記者向け説明会で、「現在の競争法は競争が成立するというのが前提になっている。前提が違う中で、解釈を変えたところで何も変わらない」と述べ、新しい法律が必要だとの見方を示した。

金融庁は、公取委の要請があれば今回の報告書や同庁の考え方を伝える方針。また、報告書を基に銀行法上の統合審査や統合後のモニタリング手法について早急に検討する。

*内容を追加しました。

(和田崇彦)

ロイター
Copyright (C) 2018 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロが電力インフラに大規模攻撃、「非人道的」とゼレン

ワールド

日中外相が会談、安保・経済対話開催などで一致

ワールド

カザフスタンで旅客機墜落、67人搭乗 28人生存

ビジネス

政府経済見通し24年度0.4%に下げ、輸出下振れ 
MAGAZINE
特集:ISSUES 2025
特集:ISSUES 2025
2024年12月31日/2025年1月 7日号(12/24発売)

トランプ2.0/中東&ウクライナ戦争/米経済/中国経済/AI......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシアの都市カザンを自爆攻撃
  • 3
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリスマストイが「誇り高く立っている」と話題
  • 4
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 5
    9割が生活保護...日雇い労働者の街ではなくなった山…
  • 6
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 7
    「自由に生きたかった」アルミ缶を売り、生計を立て…
  • 8
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 9
    韓国Z世代の人気ラッパー、イ・ヨンジが語った「Small …
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
  • 4
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医…
  • 5
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達し…
  • 6
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシ…
  • 7
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 8
    9割が生活保護...日雇い労働者の街ではなくなった山…
  • 9
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 10
    【駐日ジョージア大使・特別寄稿】ジョージアでは今、…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 4
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 5
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 6
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 7
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 8
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 9
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、…
  • 10
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達し…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中