トランプが命じた「出生地主義の廃止」には、思わぬ悪影響が潜んでいる

トランプの大統領就任当日も国境地帯には移住希望者の姿が CARLOS MORENOーSIPA USAーREUTERS
<ドナルド・トランプが大統領令でアメリカの国是である出生地主義廃止を命じた。多くのアメリカ人が国境をコントロールできていないと感じているが、この措置には思わぬデメリットがある>
この父にして、この子あり。アメリカが非プロテスタントの白人移民の大量流入に悩まされていた1927年、ドナルド・トランプの父フレッドが逮捕された。白人至上主義団体KKK(クー・クラックス・クラン)の集会に白い装束を着て参加し、移民によって「アメリカの唯一の国旗と唯一の言語」が脅かされているなどと主張したためだ。
98年後、その息子は米大統領に返り咲いた初日に、「出生地主義」を廃止する大統領令に署名した。これまで約150年以上にわたり、アメリカで生まれた人に対して自動的に市民権を付与してきた制度だ。来年で建国から250年、「アメリカ人」の定義をめぐって時に暴力も絡んだ闘争は、まだ終わりを告げていない。
出生地主義は、合衆国憲法修正14条で定められている。アメリカは民主主義や法の秩序、個人の権利、あらゆる宗教や人種に対する寛容など一連の理想によって織り成されており、それを信じる人々の集まりによって成り立っているという考え方だ。
だがアメリカは、建国時の白人プロテスタント系の国民が非白人・非プロテスタントの移民の大量流入に脅威を感じ、反移民を掲げるという事態を何度も経験してきた。反移民感情が高まると、市民権を血筋や生まれながらの特性によって制限すべきだとの声が高まる。この制限を、トランプは不法移民対策の一環としてやろうとしている。
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