火星の基地建造まで「あと20年」 中国参入、民営化で激変した宇宙開発の未来
巨大宇宙船スターシップは火星に1000隻打ち上げられる GENE BLEVINSーREUTERS
<イーロン・マスクの宇宙船を始め、技術革新とコスト低下によって宇宙の主役はもはや米ロではなくなった>
史上最大級の宇宙船「スターシップ」が、2021年中に地球周回軌道へ打ち上げられる。
この宇宙船は、起業家イーロン・マスクの率いるスペースXが建造したもの。16階建てのビルほどの高さがあり、100トンの貨物または100人の乗客を運べる。自力で着陸できる上、船体の再利用も可能だ。今後2~3年のうちに完全実用化される見通しで、24年以降に予定されるNASAの有人月探査計画に使われることが決まっている。
だが、スターシップが本当に目指すのは火星だ。今後3~7年のうちに火星への最初の打ち上げを計画している。最終的には1000隻を打ち上げ、火星に100万人が暮らせる都市を造る。
宇宙開発競争が始まったのは1957年。ソ連が初の人工衛星打ち上げに成功して世界に衝撃を与えたときだ。
その後、宇宙開発競争は米ソを中心に展開した。だが89年の冷戦終結とともに予算は縮小され、人々の関心も薄れて、有人宇宙飛行の進歩は減速した。
スペースXとブルーオリジンの誕生
しかし2003年頃から、再び競争が激化する。その背景には3つの要因があった。宇宙産業の民営化、世界の富の劇的な増加と多様化、そして加速のペースを緩めることのない技術革新だ。
03年の米スペースシャトル・コロンビアの爆発事故を受けて、当時のジョージ・W・ブッシュ米大統領はアメリカの宇宙開発の民営化に舵を切った。より低コストで、より迅速な革新を促すためだ。後任のオバマ大統領もその考えに賛同し、民営化をさらに積極的に推し進めた。
こうして10年足らずの間に、多くの民間宇宙開発企業が誕生した。なかでも最も有名で大規模なのはマスクのスペースXと、アマゾン創業者のジェフ・ベゾス率いるブルーオリジンだ。
その他の企業も小型衛星の打ち上げや3Dプリンターを使ったロケット開発など、新しい分野に乗り出している。スペースXをはじめとする民間企業の参入で、以前は約2億ドルだった人工衛星の打ち上げコストは20年までに6000万ドルに引き下げられ、いずれは200万ドルにまで下がる可能性がある。
もう宇宙開発は、米ロというかつての超大国の独壇場ではない。今は多くの国が野心的な宇宙開発計画を掲げており、中国(年間予算89億ドル)や欧州宇宙機関(80億ドル)、アラブ首長国連邦(52億ドル)などが急ピッチで宇宙開発を進めている。世界の宇宙産業は約3500億ドル規模に達し、40年代には1兆ドルを超えると予想されている。
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