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ForeignPolicy.com 外交エディター24時
アメリカに小惑星抑止の義理はあるか
英科学誌ネイチャーが、あまり注目されていないがすぐそこまで迫ったある決断期限についての論文を掲載している。
ホワイトハウス科学技術政策局は、08年に米議会で成立した法律に則って、小惑星の衝突から地球を守る責任を負う機関はどこかを10月15日までに決定しなくてはならない。検討委員会の委員らによると、その責任のすべて、または一部は、NASA(米航空宇宙局)が負うことになるとみられる。
使命を果たすため、NASAの中に惑星防衛調整室(PPCO)を設置して、2億5000万〜3億ドルの予算をつけるという議論もある。PPCOの仕事は、小惑星を探知し追尾すること、そして地球への衝突コースから逸らす技術を開発することだ。
PPCOは諸外国にも、対小惑星防衛のための資金拠出を要請することになるだろう。既に、カナダは「NEO(地球接近物)」を調査するための衛星を11年に打ち上げる予定だし、ドイツの小惑星発見衛星も12年に運用が始まると言われている。だがいずれも、2020年までにNEOを発見し追尾できるようにするという目標には程遠いとみられる。
アメリカは現在、NEOの追尾に年間約550万ドル、NEOの破壊方法の研究に100万ドル弱を投じているが、全NEO探知の目標達成には資金がまったく足りない状況だ。
既に十分カネはかけている、という声もあるだろう。地球上でアメリカが抱える問題の数々を思えば、地球外のことまでそうそうかまけていられない。
2020年までに潜在的に危険なNEOをすべて探知するという目標を達成するには、総額10億ドルかかるとNASAは言う。人類が恐竜と同じ運命から救うための資金である。しかもアメリカはこれまで、それよりはるかに崇高でない目的のために10億ドルどころではない金を費やしてきた。
■ミサイル防衛とも地球温暖化とも違う
直径1キロの小惑星でも、世界の穀物生産量を激減させ、地球の気候を激変させてしまうぐらいの影響をもつ。幅がわずか数メートルの小惑星でも、大都市を消滅させるのに十分だ。
だがちょっと待て。アメリカの時代は終わったと言われるなかで、小惑星から地球を救う使命をなぜアメリカが負わなければならないのか。例えばミサイル防衛と違って、小惑星の探知と抑止は特定の陣営ではなくあらゆる国を守るための防衛策だ。もしNASAが潜在的に危険な小惑星を探知したとしても、実際に衝突するのはアメリカ以外のどこか別の国である可能性が高い。途上国も、小惑星の脅威も地球温暖化のようにアメリカのせいだとはさすがに言えないだろう(もちろん、ベネズエラのウゴ・チャベス大統領ならそのぐらい言いかねないが)。
科学者たちは数年前から国連に、小惑星探知のために国際的な取り組みをするよう促してきた。だが国連宇宙局の努力にも関わらず、取り組みはほとんど進んでいない。
明るい兆しもある。メキシコの外務省は今年、小惑星追尾に関する国際会議を主催した。ロシアの宇宙局もEU(欧州連合)に、合同の小惑星監視プロジェクトを提案している。
幸い、まだ時間はありそうだ。地球上のかなりの人口を消滅させるほど大きな小惑星が衝突するのは、100万年に2回の確率だ。だが、地球温暖化のようにより差し迫った問題に対してさえ国際社会の意見は分裂したまま。いざ小惑星がやってきたとき、ブルース・ウィリス(『アルマゲドン』)やモーガン・フリーマン(『ディープ・インパクト』)に人類の命運を預けるはめにはなりたくない。
──ジョシュア・キーティング
[米国東部時間2010年09月13日(月)13時46分更新]
Reprinted with permission from "FP Passport", 15/9/2010. ©2010 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.
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