小長谷 文明とはやはりプラットフォームだと思います。違う文化、違う言語、違う習慣を持っている人が誰でも利用できて、相乗りできるものが文明です。逆に言うと、文化が異なるからと言って、乗れないものは文明ではありません。先ほどの駅伝制度ことジャムチも皆が相乗りできました。
杉山先生がよく書いていらっしゃったのは、遊牧社会から現代が学ぶべきところとは、いろいろなものを相乗りできるようなところである。宗教も民族も拒まず、みんなそれぞれでいいではないか、と。
実は支配者は自分ではやる気がなく、最初から専門集団を利用するつもりで「みんな持ち寄ってください」という姿勢です。だからこそ、いろいろな要素をアセンブルした遊牧文明ができたのだと思います。
※中露に挟まれたモンゴルの「アンダ」(戦略的パートナーシップ)とは――モンゴルから中華を見る[後編] に続く。
小長谷有紀(Yuki Konagaya)
1981年京都大学卒業、同大学院文学研究科博士課程、同大学文学部助手、国立民族学博物館助手を経て、国立民族学博物館人類文明誌研究部客員教授。人間文化研究機構理事もつとめる。現在は日本学術振興会監事。専門はモンゴル研究。主な著書に『モンゴルの春─人類学スケッチ・ブック』(河出書房新社)、『モンゴル草原の生活世界』(朝日新聞社)、『現代モンゴルを知るための50章』(共著、明石書店)など多数。
岡本隆司(Takashi Okamoto)
1965年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得満期退学。宮崎大学教育学部講師、同教育文化学部助教授を経て、京都府立大学文学部教授。専門は近代アジア史。著書に『世界史序説』(筑摩書房)、『「中国」の形成』(岩波書店)、『東アジアの論理』(中央公論新社)、『属国と自主のあいだ』(名古屋大学出版会、サントリー学芸賞)、『中国の誕生』(名古屋大学出版会)、『世界史とつなげて学ぶ 中国全史』(東洋経済新報社)など多数。
田所昌幸(Masayuki Tadokoro)
1956年生まれ。京都大学法学部卒業。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス留学。京都大学大学院法学研究科博士課程中退。博士(法学)。姫路獨協大学法学部教授、 防衛大学校教授、慶應義塾大学法学部教授を経て、国際大学特任教授。慶應義塾大学名誉教授。専門は国際政治学。主な著書に『「アメリカ」を超えたドル』(中央公論新社、サントリー学芸賞)、『越境の政治学』(有斐閣)、『社会の中のコモンズ』(共著、白水社)、『新しい地政学』(共著、東洋経済新報社)など。
特集:中華の拡散、中華の深化──「中国の夢」の歴史的展望
公益財団法人サントリー文化財団・アステイオン編集委員会[編]
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