■大内 言葉をひっくり返して「ジャーナリスティック・アカデミズム」は果たしてあるのか? などと考えさせられました。つまり双方向の話だと受け止めています。
専門性が高い記者であればアカデミズム側、ジャーナリズム側のどちらの媒介役にもなれます。逆に研究者も、メディアに出ることに慣れた方なら専門的な議論の翻訳がご自身でできる。これは、どちらか一方がいればいいということではなく、両方いてほしいということです。
■小林 アカデミズムとジャーナリズムの両方が重なり合ったグラデーション部分が非常に大事だと思います。日本はこの部分がきちんと存在しているからこそ、今でも新書や選書のような質の高い読み物がある程度売れている。
その点で、アカデミズムとジャーナリズムは距離を近づけ、協力できるところはどんどんしていったほうがいいと思います。それがSNS文化への対抗や歯止めになるのではないか、と思います。
■鈴木 日本では、近所の書店にも普通に新書の棚はありますし、定期的に買い支えている層は確実にいます。論壇記者が想定する大きな読者層はそこですよね。
その読者層を大事に育てていくことが我々の仕事であり、その場を維持するにも『アステイオン』とも協同して、論壇という形を見せていかなくてはならないと、今回の座談会で改めて思いました。
言論がどんどん先鋭化しているという話も出ましたが、我々が社会を崩す側に回っていかざるを得なくなってしまうことへのストッパーとして、中から一緒にやっていくということです。
■武田 現場からの貴重なお話をうかがえました。コロナが落ち着きましたら、次はぜひリアルでこの話をもう一度じっくりうかがいたいと思います。本日は長時間、どうもありがとうございました。
『アステイオン95』
特集「アカデミック・ジャーナリズム」
公益財団法人サントリー文化財団
アステイオン編集委員会 編
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