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遺伝子編集で作成した「ウイルス耐性ニワトリ」が鳥インフルエンザ、卵の安定供給の救世主に?
鳥インフルエンザウイルスは、亜型や株が違ってもANP32Aの機能を必ず利用します。エディンバラ大の研究チームはそこに注目し、ニワトリの遺伝子にノーベル賞を受賞した遺伝子編集技術「CRISPR/Cas9(クリスパー・キャスナイン)」を使用してANP32Aの一部を書き換えて、鳥インフルエンザウイルスが侵入してもmRNAを作れないようにすることで、感染に対抗する方法を考案しました。
ニワトリの生殖細胞に対してこの方法で遺伝子編集をすると、卵から生まれた次世代ニワトリは鳥インフルエンザウイルスのmRNAを転写しないANP32Aを持っているはずです。研究者たちは、次世代ニワトリ10羽と比較対象となる遺伝子未編集の親から生まれたニワトリ10羽の鼻に、自然環境での曝露を想定した量の鳥インフルエンザウイルス(低病原性のH9N2型)を注入しました。
その結果、遺伝子未編集のニワトリでは10羽中10羽が鳥インフルエンザに感染し、遺伝子編集した次世代ニワトリでは10羽中1羽だけが感染しました。さらに、前者は他の鳥に鳥インフルエンザを感染させましたが、後者は感染させることはありませんでした。
「ANP32Aを書き換えるとほぼ感染しないこと」を示せたことは意義深いですが、「感染した遺伝子編集ニワトリが、他の鳥にウイルスを感染させなかったこと」はさらに重要な結果です。なぜなら、多くの国で鳥インフルエンザワクチンが用いられない理由の1つに、ワクチン接種しても「発症せずにウイルスを保持しているニワトリ」になる場合があり、それが養鶏場での病気の蔓延を隠してしまうことがあるからです。今回の遺伝子編集をする方法では、他の鳥への感染がないため、病気の蔓延が起こりにくいと言えます。
効果は世代を超えて引き継がれる
ただし、ウイルスへの耐性は完璧ではなく、自然の想定曝露量の1000倍に当たる鳥インフルエンザウイルスを使った実験では、遺伝子編集されたニワトリでも10羽中5羽で感染が起こりました。とはいえ、気道に存在するウイルス数は、遺伝子未編集のニワトリと比べると極めて少なく、他の鳥を感染させるおそれは低いと考えられるといいます。
ANP32Aの機能はマウスでは骨、軟骨、脳、心臓の発達に関連しているため、遺伝子編集された次世代ニワトリたちのこれらの部位の異常も懸念されましたが、問題はなかったとのことです。さらに、次世代ニワトリのメスは正常に産卵したといいます。遺伝子編集の効果は世代を超えて引き継がれるため、今後はすべて生まれつき鳥インフルエンザウイルスに耐性を持つ個体になります。
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