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遺伝子編集で作成した「ウイルス耐性ニワトリ」が鳥インフルエンザ、卵の安定供給の救世主に?
日本では、養鶏場で鳥インフルエンザが発生した場合、その農場で飼われている鶏は全て殺処分すると「家畜伝染病予防法」で定められています。22年秋から現在にいたる国内での卵の高値は、昨年10月から4月までに約1700万羽の鶏が鳥インフルエンザの発生によって殺処分されたことが最も大きな原因となっています。
ところが、養鶏の鳥インフルエンザウイルスをワクチンで予防する方法は、現在のところ国内では普及していません。世界的に見ても、中国を含むアジアの一部地域では採用されていますが、決して主流ではありません。
ワクチンは、先に予防したい病原体の免疫をつけておいて、実際に感染したときにいち早く敵と認識させて体内からすばやく排除する方法です。けれど、インフルエンザウイルスは変異しやすいために、流行する亜型や株の予想が難しく、ヒトのインフルエンザワクチンでも「接種しても効く時と効かない時があり、当たり外れがある」と言われています。
本年7月に発表された農林水産省の畜産統計によると、2月1日現在の国内の鶏の飼育数は採卵用の成鶏めす(6カ月齢以上)の飼養数は1億2857万9000羽、ブロイラーは1億4146万3000羽です。合わせて3億羽近い鶏が鳥インフルエンザにならないために、未来の流行を予想して何種もの亜型や株を組み合わせたワクチンを生産し適量を投与したとしても、コストがかかるわりに完全には防げません。世界的に見てもメーカーや養鶏の現場は二の足を踏んでいます。
鳥インフルエンザウイルスが必ず利用するANP32A
そこで、エディンバラ大の研究チームは、「ニワトリの体内にウイルスが入っても増殖させないこと」で鳥インフルエンザを防ごうと考えました。
ウイルスは自分を複製するための設計図(遺伝子)は持っていますが、設計図を殻に包んだ簡素な構造のため、それをもとに組み立てる設備(細胞)は持っていません。他の生物の細胞に侵入(感染)し、自分の設計図を紛れ込ませるという方法で増殖します。鳥インフルエンザウイルスの場合も同じで、ニワトリ細胞内のANP32Aと呼ばれるタンパク質を利用して自己複製し、増殖します。
ANP32Aは本来、ニワトリのDNAからRNAを作る、つまりニワトリ細胞の複製過程で設計図を転写する役割を担っています。鳥インフルエンザウイルスはANP32Aの機能を乗っ取り、ニワトリ細胞のためのmRNAではなく鳥インフルエンザウイルスのmRNAを作らせます。その結果、周囲の材料を使ってウイルス構造タンパク質が合成され、子孫ウイルスが大量に生産されます。
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