コラム

SDGs達成度ランキング2023で指摘された、日本が世界水準になれない理由

2023年06月28日(水)11時20分

では、日本のSDGsへの取り組みは、「持続可能な開発レポート」ではどのように見られているのかを確認しましょう。

「17の目標別の達成状況」は、SDSNが各国の達成度を4段階に分けて評価しています。日本は2023年時点で、目標4「質の高い教育をみんなに」と目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」の2項目のみが、最高ランクの「達成済み」とされています。前者は初等教育の就学率や高等教育を受けた人の割合が高いこと、後者は年間を通して使える道路にアクセスできたりインターネットを使えたりする国民が多くインフラの整っていることが評価されました。

次に上から2段階目の「課題が残る」とみなされているのは、目標1「貧困をなくそう」、目標3「すべての人に健康と福祉を」、目標6「安全な水とトイレを世界中に」、目標11「住み続けられるまちづくりを」と目標16「平和と公正をすべての人に」の5項目です。目標16は22年時点では「達成済み」とされていましたが、23年は「報道の自由」の指数が下落したことなどから評価を落としました。

続いて上から3段階目の「重要な課題がある」と評されたのは、目標2「飢餓をゼロに」、目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」、目標8「働きがいも経済成長も」、目標10「人や国の不平等をなくそう」、目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」の5項目です。目標8は22年よりも評価を1段階下げたのに対して、目標17は1段階上げてこの位置に入りました。

ジェンダー平等には程遠く

最低ランクにあたる「深刻な課題がある」と判断された5項目は、理由を詳細に見てみましょう。

・目標5「ジェンダー平等を実現しよう」

ランキング上位のヨーロッパ諸国は軒並み高評価を得ていますが、日本は国会議員に占める女性の割合や、男女の賃金格差に改善が見られないことで評価を大きく下げました。

日本では、衆議院議員に占める女性の割合は、21年10月の総選挙で9.7%でした。ちなみにSDGs達成度ランキングで3年連続1位のフィンランドでは、国会議員のうち女性の割合は21年の数値で46%です。

世界経済フォーラム(WEF)が21日に発表した「Global Gender Gap Report(世界男女格差報告書)2023」でも、日本は146カ国中125位と前年の116位から順位を落としました。このレポートでも、日本は政治(138位)と経済(123位)の分野で最低ランクの評価を受けており、国会議員や管理職の人数の男女差が言及されています。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、高市首相の台湾発言撤回要求 国連総長に書簡

ワールド

MAGA派グリーン議員、来年1月の辞職表明 トラン

ワールド

アングル:動き出したECB次期執行部人事、多様性欠

ビジネス

米国株式市場=ダウ493ドル高、12月利下げ観測で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 5
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 6
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 7
    Spotifyからも削除...「今年の一曲」と大絶賛の楽曲…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story