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大成長の甘味料市場 日本における「甘味」の歴史とリスク
日本人にとって甘味料と言えば、ブドウ科植物の蔓である甘葛、穀物から作る水飴、蜂蜜という時代は室町時代まで続きます。砂糖は奈良時代に鑑真が伝えたとされますが、大々的に輸入されるのは、戦国時代の南蛮貿易からです。江戸時代には琉球王国で黒砂糖、讃岐国で和三盆などの国産砂糖が生産されるようになり、庶民の口にも届くようになります。
鎖国が解かれた明治時代には輸入砂糖が大量に流入し、国内の製糖業も整備されます。けれど第2次世界大戦中、終戦直後は深刻な砂糖不足となり、1952年までは配給制が採られました。
甘味の需要に生産が追いつかなかったため、砂糖代替品として使われたのが、ズルチンやチクロなどの人工甘味料です。ズルチンは砂糖(スクロース)の250倍、チクロは30~50倍の甘さを持ち、少量で甘味を付けることができました。けれど、ズルチンは中毒による死亡例の発生などで69年1月に、チクロは発がん性を疑われて同年11月に国内使用禁止となりました。
「砂糖は健康に悪い」の根拠と真偽
現在、砂糖の代わりに使われる甘味料には、天然物から精製されるもの(例:ステビア、ラカンカ)、糖アルコール(例:キシリトール、ソルビトール)、合成甘味料(例:アスパルテーム、スクラロース)などがあります。終戦直後は砂糖の代替製品という位置付けでしたが、日本が豊かになるにつれ、カロリーオフや虫歯になりにくさ、腸内細菌叢への影響などの性質も注目されるようになり、多様な目的で使われるようになりました。
国民1人当たりの砂糖の消費量は、74年の30.4キロをピークに年々減っており、20年は15.6キロと半減しています。砂糖には、「消化吸収が早く、速やかにエネルギー源となる」「抗うつやリラックス効果のある脳内物質セロトニンの前駆物質(トリプトファン)の脳内への輸送を促進する」などの優れた面がありますが、近年は、「太る」「糖尿病になる」「キレやすい子供になる」などマイナスイメージが多く取り沙汰されています。
もっとも、これらは過剰摂取やダラダラと食べ続けることが原因であることが大半です。「砂糖は健康に悪い」の根拠とされる研究としては、米タフツ大の研究チームが15年に米心臓協会(AHA)の学術誌「Circulation」に発表した「糖分を過剰に含む高カロリー飲料が原因で死亡した人は、世界で推計18万4450人(2010年)。高カロリー飲料の飲み過ぎは、肥満、2型糖尿病、心血管疾患などの発症リスクを高めている」が有名ですが、あくまで対象は過剰摂取の場合です。
人工甘味料のリスクは、フェニルケトン尿症の人はアスパルテーム(砂糖の100~200倍の甘味)がうまく代謝できないことが知られています。14年には英科学総合誌「Nature」に、イスラエルのワイツマン科学研究所による「人工甘味料の摂取は、耐糖能異常を引き起こして糖尿病のリスクを上昇させる可能性がある」という研究成果が掲載されました。研究で使われた人工甘味料は、最も一般的に使われているサッカリン、スクラロース、アスパルテームでした。
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