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DNA解析から縄文人度の高い地域を探れば、肥満や喘息になりやすい県民も分かる?
90年代後半になると、人類学にDNA解析を用いる手法は急速に進展しました。
『核DNA解析でたどる日本人の源流』(河出書房新社)の著書がある国立遺伝学研究所の斎藤成也教授(当時)らの研究チームは16年、東大総合研究博物館所蔵の福島県・三貫地貝塚の縄文人骨の核DNAを初めて解析し、成果を発表しました。
それまでは、縄文人骨ではミトコンドリアDNAは解析されていたものの、核DNAは技術的に難しく実施されていませんでした。ミトコンドリアDNAは母系遺伝であり、塩基数も核DNAの約20万分の1と小さいため、得られる遺伝情報は限られてしまいます。斎藤教授らのチームは縄文人の奥歯の中から核DNAを抽出し、「次世代シークエンサー」を用いて縄文人ゲノムの4%にあたる1億塩基の解読に成功しました。
縄文人と弥生人の混血度合いを都道府県別に解析
その後、他の縄文人骨や弥生時代の遺跡から得られた人骨の解析が進み、二重構造モデルは遺伝学的に見ても妥当であることが示されました。次に、研究者たちが注目したのは、日本列島内での縄文人と渡来人の混血の度合いの地域差でした。
これまでのDNA解析によって、現代の日本人の地域集団には、現代のアジア大陸の人々の集団に比較的近い集団と、それほど近くない集団があることが知られています。日本人の渡来人系の祖先集団は現代のアジア大陸の集団と近縁であることから、「現在の遺伝的な地域差は、弥生時代に起こった縄文人と渡来人との混血の度合いの地域差に起因するのではないか」と予想されていました。
大橋教授らは21年、ヤフーが20年まで実施していた遺伝子検査サービス「HealthData Lab」に集まったデータのうち許諾の得られたものを用いて、都道府県別の縄文人と弥生人の混血度合いを解析した結果を発表しました。
1都道府県あたり50人のデータを解析すると、縄文人由来のゲノム成分の比率が最も高かったのは沖縄県で、九州や東北が続きました。対して、渡来人由来の比率が最も高かったのは滋賀県で、近畿、北陸、四国で高い結果が見られました。なお、北海道は縄文人由来の比率が高いとされているアイヌの人々が含まれていなかったため、関東と似た結果になりました。
弥生時代に最初に渡来人が上陸したと考えられている九州北部地域よりも、近畿のほうが渡来人由来の比率が高いことは、不思議に思えます。大橋教授は「九州北部では上陸後も渡来人の人口があまり増えず、近畿などの地域で人口が拡大したのではないか」と説明しています。
縄文人の祖先は、アジア大陸の集団から数万年前に分化し日本列島に渡ると、島国であるために長期間、大陸の集団から孤立しました。そのため、現代日本人には他の現代の東アジア人に見られない、縄文人由来の特有の遺伝的変異「縄文人由来変異」が蓄積されています。
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