コラム

コロナワクチンと同じmRNA技術を用いたインフルエンザワクチンが開発される

2022年12月06日(火)11時20分

mRNAワクチンのメリットは、感染性がない、細胞成分などの異物の混入がない、アジュバント(不活化ワクチンで効果を高めるために使う添加物)が必要ないことなども挙げられますが、何よりも、ウイルスの遺伝情報が分かれば数週間でワクチンを開発できるスピードが最大の長所です。従来型のワクチンでは、開発には数年から10数年の期間が必要です。とりわけ、インフルエンザウイルスのように変異しやすいウイルスでは、変異しても遺伝情報さえ取得すれば、速やかに新しいワクチンを開発できることは大きな利点です。

今回の研究では、マウスの実験で、季節性インフルエンザだけでなく、変異が大きく、これまでに人が免疫を獲得していないために感染すると重症化しやすい「新型インフルエンザ」にも予防効果があることが示唆されました。

さらに4カ月後にもマウス体内に抗体が存在していること、フェレットにもマウスと同様の効果があることが確認されました。異なる動物種に対しても効果が現れていることから、今後はヒトに対しても効果を発揮するかどうかを調べるそうです。

インフルエンザでmRNAワクチンが一般的になる日は近いかもしれません。けれど、あくまで利用者がメリット、デメリットを吟味して、ワクチンを接種するか否か、接種するならばmRNAワクチン、不活化ワクチン、生ワクチンなどを自分の意志で選べるように、選択の幅と情報公開が広がることが重要でしょう。新型コロナでの経験が活かされることを願って止みません。

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プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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