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『鬼滅の刃』でも現実でも「青い彼岸花」が見つからない科学的理由
もっとも、リコリンやガランタミンは水溶性の毒なので、球根を充分に水にさらせば毒が抜けて食用になります。なので、かつて貧しい農村では、飢饉に備える目的でも植えられていました。作中では主人公・炭治郎の回想にも彼岸花は現れるのですが、見たことがあったり、家の近くに植えられていたりしても不思議ではありません。
彼岸花は古くから「球根をすりおろしたものを足の裏に貼ると、むくみが取れる」という民間療法でも使われていました。有毒なのは知られていたので、科学が発達する前は外用薬として限定的な使用でした。現在は毒性をコントロールできるようになり、球根に含まれるリコリンは鎮咳効果のある漢方薬に、ガランタミンはアルツハイマー型認知症治療薬「レミニール®」(一般名:ガランタミン臭化水素酸塩)にと、内服薬としても有効に使われています。彼岸花を無惨に内服させた主治医は、先見の明がありすぎたのかもしれません。
青い彼岸花が見つからない訳
さらに、彼岸花は通常の花よりもカラーバリエーションが定着しにくい、つまり赤以外の色が現れにくいのも、無惨にとっては悲劇でした。
日本の彼岸花は、三倍体という珍しい特徴を持った植物です。
三倍体とは、染色体のセットが3つあることです。生物は通常、染色体は2とか4の偶数のセット持っていて、生殖細胞を作る時に半分のセットになります。オス(雄しべ)とメス(雌しべ)から同量のセットをもらって、子孫を残すための受精卵や種子ができます。
けれど、奇数のセットを持つ彼岸花は、人工的に三倍体にしている種なしすいかのように、種子を作ることができません。つまり、もし突然変異で青色の彼岸花が出現しても、種子で大量に子孫を残したり、風や動物によって種子が運ばれたりすることはできません。人の手で掘り起こして球根を分けない限り、青い彼岸花が増えたり複数の場所に現れたりすることはありえないのです。
実際に、現実の世界でも、青い彼岸花は見つかったことがありません。今後、現れる可能性はあるのでしょうか。
自然界の花の色は白色が33%で最も多く、黄色系が28%、赤色系が20%、青と紫系が17%と続きます。
植物は自分で動けないので、種を作るために昆虫などの助けを借りて花粉を運んでもらう必要があります。そこで目当ての昆虫や鳥に「ここに食べ物の蜜がある」と自分の存在をアピールするために、花の色や香りを使います。
たとえば、ミツバチは紫外線からオレンジ色までを見ることができますが、赤は見えません。ミツバチが最も見やすい色は黄色です。なので、ミツバチに受粉の手助けをしてほしい花は、黄色系でミツバチが蜜を吸いやすい形になっています。いっぽう、赤い花にはアゲハチョウが集まりやすいです。また、白い花を咲かせる植物が多い原因は、白は他の色に比べて多くの昆虫に見えやすいためだと言われています。
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