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『鬼滅の刃』でも現実でも「青い彼岸花」が見つからない科学的理由
鬼滅ブームが続くほど「青い彼岸花」実現に近づく?(写真は2020年12月、東京) KIM KYUNG HOON-REUTERS
<最大の敵である鬼舞辻無惨が「青い彼岸花」を探すのに苦労するエピソードは、科学的にも納得できる設定だ。漫画だけでなく、現実の世界でも見つからない理由を、作家で科学ジャーナリストの茜灯里が解説する>
日本では興行収入歴代1位の約403億円、全世界でも約517億円を突破した『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(原作:吾峠呼世晴)。10月にはTVアニメ「鬼滅の刃 無限列車編」が始まり、同・遊郭編の放映も決定しました。"鬼滅ブーム"はまだまだ収まらないようです。
鬼滅の刃には、キーアイテムがあります。主人公・竈門炭治郎(かまどたんじろう)が所属する「鬼殺隊」の最大の敵である鬼のボス・鬼舞辻無惨(きぶつじむざん)が探し求める「青い彼岸花」です。
病弱な人間だった頃、無惨は主治医に青い彼岸花が原料の薬を投与されました。効き目がないことに怒った無惨は医者を殺しますが、その後すぐに薬の効果──鬼になる──が現れます。鬼になった無惨は強靭な肉体を手に入れますが、人を喰らうようになり、日光の下にも出られなくなってしまいます。
無惨は、太陽の光を克服し完璧な生物になる鍵は青い彼岸花だと考え、日本中を探し回ります。けれど、平安時代に生まれた無惨は、鬼滅の刃の舞台となる大正時代になっても見つけることはできませんでした。手下の鬼たちをこき使って大捜索したにもかかわらずです。
鬼滅の刃の世界観にぴったり
無惨が青い彼岸花探しに苦労するエピソードは、科学的にとても納得できる設定です。
彼岸花は、秋の彼岸の頃に赤い花を咲かせる多年草です。弥生時代に中国大陸から日本に渡来したとされるので、無惨の生まれた平安時代の日本にも当然ありました。
この植物の名前は「食べたら彼岸(死の世界)に行く」が由来だという説もあります。実際に彼岸花の球根にはリコリン、ガランタミン(アルカロイドの一種)などの毒があって、人が食べると下痢や吐き気を起こして、重症の場合は死に至る場合もあります。毒があることを利用して、土を掘り起こすネズミやモグラの対策で球根を畑や墓地の近くに植えたのが、彼岸花の栽培の起源だと考えられています。サンスクリット語に由来を持つ「曼珠沙華(マンジュシャゲ)」や、墓地から連想した「死人花(しびとばな)」の異名も持ち、鬼滅の刃の世界観にはぴったりの名前を持つ花と言えるでしょう。
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