コラム

LINEのAIプラットフォーム「Clova」の何がすごいのか解説しよう

2017年03月03日(金)09時11分

AIプラットフォーム「Clova」搭載のスマートスピーカー「Wave」  LINE

<LINEはなぜ、既に業界標準と言われているAmazonEchoと対決することを選んだのか?>

LINEは、AIプラットフォーム「Clova」でスマートフォンの次のパラダイムの覇権に挑戦することを決めた。そこに立ちはだかるのは、米EC最大手のAmazon。コミュニケーションこそがインターネットの目的という信念のもと、世界の強豪に対するLINEの2度目の挑戦が始まった。

スマホの次はボイス

Clovaは、LINEの日韓のエンジニアが協力して開発したAIプラットフォーム。LINEは、そのAIを搭載したスピーカー型デバイス「WAVE」を今年夏に、ディスプレイ搭載型デバイス「FACE」を2017年冬に発売する計画だ。

狙い撃つはAmazonのスピーカー型デバイスの「Amazon Echo(エコー)」と、それに搭載された音声AI「Alexa(アレクサ)」だ。

Echoは発売以来、数百万台が出荷されたと推計されているAmazonの大ヒット商品。しかし出荷台数より重要なのが、EchoやAlexaと連携するサードパーティのデバイスやアプリの数。既に8000以上のデバイスやアプリがEchoによって音声で操作することが可能だと言われている。

スマートフォンですべての家電製品の操作が可能な「スマートフォーム」を実現しようと、これまでシリコンバレーのテック大手を始め、世界中の大手家電メーカーがさまざまな標準技術を提唱してきた。

しかし標準化が一向に進まない中、Amazonがボイス機能を核に欧米の業界標準をあっという間に手中に収めたのだ。

発表、発売をEchoより先行させろ

そのEchoが日本でも年内に発売になるという噂がある。「エンジニアの引き抜きが始まった」「Amazonの技術を採用するよう大手メーカーを説得し始めた」という情報を耳にするようになったし、ハードウェア担当の広報パーソンや、日本語データ処理の担当者の人材募集も始まっている。

【参考記事】日本でもAmazon Echo年内発売?既に業界は戦々恐々

米国のテクノロジー大手は、1年で最も消費が活発になるクリスマス商戦を念頭に置いて、初夏に新商品を発表し、秋に発売するパターンが多い。このパターンを日本でも踏襲するとすれば、Amazon Echoの日本国内での発売は秋、発表は初夏になる可能性が高い。

もしどこかの日本企業が対抗策を何も打ち出さないのであれば、ほとんどすべての家電メーカーやアプリ開発企業はAmazonになびき、日本市場もまたAmazonの手中に落ちることになる。

そうなる前に発表するしかない。タイミングは今しかない。LINE経営陣はそう判断したのだろう。

なぜ戦う方を選んだのか

しかしなぜLINEは、Amazonに対抗することを選んだのだろうか。AmazonはAlexaを無償で公開している。他の8000ものサードパーティと同様に、Alexaに準拠する方を選ぶほうが、ビジネス的には賢明なのではないだろうか。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=円が軟化、介入警戒続く

ビジネス

米国株式市場=横ばい、AI・貴金属関連が高い

ワールド

米航空会社、北東部の暴風雪警報で1000便超欠航

ワールド

ゼレンスキー氏は「私が承認するまで何もできない」=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 8
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 9
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story