コラム

人工知能が万人のものに?米新興企業データロボットがヤバイらしい件

2016年01月28日(木)18時04分

 データロボットでは現在、この客は買うか買わないか、再びアクセスするかしないか、というような2つの結果のどちらになるかを予測する「二値分類」と、売り上げが幾らになるのか、というような数値を予測する「リグレッション」の2つのタイプの予測モデルの開発が可能だという。

 今後は、この料理は韓国料理なのかイタリアンなのかというように複数のグループに分ける「多値分類」や、この人にはこの商品をお勧めすると購買につながるというような「レコメンデーション」などの予測モデルの開発機能も提供する予定。既にベータ版(正式版をリリースする前の試作版)として提供を始めているという。

 米国では、インターネット上のショップや、POSデータを持つリアルな店舗、銀行や保険会社、メディア、広告会社、ダイレクトメールのマーケッターなどが、データロボットのサービスを利用し始めている。おもしろいところでは、プロ野球のメジャーリーグのスカウトマンが、データロボットを使って選手のデータを解析し、妥当な契約金の額をはじき出しているという。

 ほかにもビッグデータと呼ばれるような大量のデータを集めている企業なら、データロボットのシステムを使うことで、これまで以上の価値をビッグデータから引き出せることになるだろう。

ビジネスマンがビッグデータを活用する時代へ

 人工知能の話をすると「うちの会社には無関係」という反応をする人が多い。その理由は「うちの会社には人工知能の研究者はいないし、採用できそうにもないから」というのが最も多い。そういう反応をする人に対して、「いずれ表計算ソフトExcelを触る感覚で、人工知能を操れるサービスが登場しますよ」と話してきた。

 そう話した僕でさえ、一般ビジネスマンが人工知能を自由に操れる時代の到来は、あと数年先だろうなと高をくくっていた。

 しかしデータロボットによって、ビジネスマンでも人工知能を操れる時代の幕が切って落とされようとしている。表計算ソフトExcelは、ビジネスの世界を一変させた。それと同等、いやそれ以上の大変化をビジネスの世界に引き起こすかもしれない。「データサイエンスの大衆化が始まるんです」。リクルートの加藤さんはそう語る。

 ビッグデータ時代と呼ばれるようになって久しいが、集めた大量のデータをうまく活用できないケースが多いという話をよく聞く。人工知能が一般ビジネスマンでも利用できるようになれば、産業界のあらゆる場面に人工知能が利用されることになるだろう。

 時代はますます加速している。テクノロジーの進化をレポートする僕のような人間にとっても、驚くべき進化の速度だ。

 そのデータロボットのトップエンジニアが来日して、リクルート主催のカンファレンスで講演するという。このカンファレンスにはシバタさんも登壇するらしい。どのような変化がこれから起ころうとしているのか、このカンファレンスに参加して確認するつもりだ。その模様はまた後日、この場で発表したい。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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