最新記事
ロシア経済

旧ソ連時代に逆戻り?卵を買うために長蛇の列を作るロシア人

Videos Show Massive Lines for Eggs in Russia as Prices Skyrocket

2023年12月14日(木)16時46分
ケイトリン・ルイス
ルーブル

インフレでルーブルの価値も下がる一方  REUTERS/Maxim Shemetov

<プーチンのウクライナ侵攻に対する欧米諸国の制裁で、ロシア国内のインフレ率は急上昇。食生活に欠かせない卵を少しでも安く買うために並ぶ人々の姿がSNS上で話題になっている>

ロシアでは、家庭の必需品である卵が手に入らず苦労している。原因はインフレと輸入コストの上昇だ。

<動画>まるで旧ソ連、卵を買うために長蛇の列を作るロシア人

ロシア統計局のデータを引用したロイター通信によれば、ロシアの卵の価格は今年に入ってから42.4%上昇した。

専門家によれば、価格の高騰は、ウクライナ戦争以降、西側諸国がロシアに科している経済制裁の間接的な結果といえる。ウラジーミル・プーチン大統領が始めたウクライナ侵攻に対する国民の支持率も低下している。



ソーシャルメディアには、ロシア人が屋台で卵を買うために長蛇の列を作る動画が投稿されている。スーパーで売られている卵は高いからだ。

冬用のコートや帽子を身にまとい、うっすらと雪が積もった小さな屋外マーケットで列に並ぶ市民の動画はXで共有され、ロシア語放送局『カレント・タイムTV』でも11日に放送された。

別の動画には、セミトレーラー・トラックの荷台から卵を買おうと長蛇の列を作る人々の姿が映っていた。

ロイター通信によると、ロシアのスーパーマーケットで売られている卵の価格は、小さな市場の2倍以上になることもあるという。

悪夢のような物価上昇

南部の都市ベルゴロドでは、スーパーでは10個150ルーブル(1.67ドル)で売られている卵を、10個65ルーブル(0.72ドル)で買うために、人々が小さな市場で列を作ったという。

モスクワ在住のエリザベータ・シャラエフスカヤは11日、フランスの通信社AFPの取材に答えて、高騰する物価に「ぞっとする」と語った。「この物価上昇は、悪夢です。卵だけでなく、あらゆるものの値段が上がっている」

21歳の学生、イリヤ・ザルビンはAFPの取材に対し、「以前は70ルーブルあれば卵が買えた。今では130~140ルーブルもする」と語った。

モスクワを拠点とするペトロバ・ファイブ・コンサルティング社の最高経営責任者マリーナ・ペトロバは、カレント・タイムTVの取材に対し、卵の価格上昇は、欧米の経済制裁によるニワトリ向けの飼料と医薬品の価格上昇が原因だと語った。

ロシア経済開発省は13日、生活必需品の在庫不足にあえぐ小売り店を支援するため、2024年明けから半年間、卵の輸入にかかる関税を免除すると発表した。輸入は「友好国」、つまりロシアに制裁を科していない国からしか認められていない。

ロイター通信によると、同省は「この決定は短期的に国内市場における卵の需給バランスを改善し、供給の増加につながるだろう」と述べている。

プーチンは、国民の経済的苦境に「驚いている」と述べ、世界で最も経済制裁を受けているにもかかわらず、ロシアの経済は好調だと主張した。だが11月のロシアのインフレ率は7.48%に達した。ちなみに同月のアメリカのインフレ率は3.1%だった。


20240521issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月21日号(5月14日発売)は「インドのヒント」特集。[モディ首相独占取材]矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディの言葉にあり

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

バイデン大統領、対中関税を大幅引き上げ EVや半導

ワールド

再送-バイデン政権の対中関税引き上げ不十分、拡大す

ワールド

ジョージア議会、「スパイ法案」採択 大統領拒否権も

ビジネス

米ホーム・デポ、売上高が予想以上に減少 高額商品が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プーチンの危険なハルキウ攻勢

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 10

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中