最新記事
ヨーロッパ

ドイツ極右に「中国との癒着」が発覚...中国の「脅しと賄賂」に、欧州の政党が屈してしまう理由

2023年10月19日(木)10時03分
ジェームズ・パーマー(フォーリン・ポリシー誌副編集長)
AfD所属の欧州議会議員マクシミリアン・クラー

AfDの中国接近は「パターンどおり」だが(集会で演説するクラー、9月) CRAIG STENNETT/GETTY IMAGES

<「ドイツのための選択肢(AfD)だけではなく、中欧・東欧の極右勢力が中国やロシアになびく明確なパターンがある>

ドイツで急伸する極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」に醜聞だ。今月、独メディア「ティー・オンライン」はAfD所属の欧州議会議員マクシミリアン・クラーと中国当局との癒着を報じた。

EU懐疑主義、反移民を掲げる同党は来年の欧州議会選で親中派として知られるクラーを筆頭候補に据えている。報道によると、クラーに「非常に近しい人々」が、中国から資金提供を受けていた。

また彼の側近はドイツ国内の中国反体制派グループと中国当局の双方とつながりがあり、前者の動きを後者に注進している疑いがあるという。クラーはこの報道を「事実無根だ」と否定しており、この一件が彼の強固な支持基盤に影響を与えることはなさそうだ。

ただ中国とつながるAfDの指導層はクラーだけではない。過去1年の間に、同党の政治家が数人、当局の招待で中国を訪れたことが分かっている。同党は中国・新疆ウイグル自治区での国家主導の残虐行為や、ウクライナ戦争での中国のロシア支援を受けて中国と距離を取るドイツ政府の姿勢に反対の立場だ。

専制国家への接近は、AfDだけでなくドイツの極左運動にも共通して見られる。しかし同党の親中化はそれよりも、中欧・東欧の極右全体に見られる明確なパターンをなぞっている。

欧州での「ばらまき」をいとわない中国

このパターンは欧州の各勢力に「ばらまき」をいとわない中国の姿勢と、中国の事実上の同盟国であるロシアと極右勢力が概して友好的であることの両方の帰結だ。アメリカやEUが中国と対決姿勢を強めているため、欧州諸国の反米・反EUの右派が中国に傾いていることも背景にある。

例えばハンガリーのオルバン首相や、セルビアのブチッチ大統領は親中傾向を隠さない。チェコではゼマン大統領(当時)が2015年、中国の政商、葉簡明(イエ・チエンミン)を経済顧問に任命したほどだった。

対照的に、西ヨーロッパの極右政党は中国に対して複雑な態度を取っている。フランスでは国民連合のマリーヌ・ルペン党首がインド太平洋における対中戦略を訴える。イタリアではメローニ首相が中国の「一帯一路」構想から離脱する方針を決めた。極右化が進むイギリスの保守党にも強力な反中派閥がある。

中国側からすると、中欧・東欧の極右勢力との協力はイデオロギーの親和性ではなく、便宜上の理由に基づいている。味方になりそうな各国の周縁的な勢力を見つけてはせっせと資金を注ぐことを繰り返しているだけだ。

【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 

ビジネス

米地銀リパブリック・ファーストが公的管理下に、同業
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ」「ゲーム」「へのへのもへじ」

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    走行中なのに運転手を殴打、バスは建物に衝突...衝撃…

  • 7

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 8

    ロシア黒海艦隊「最古の艦艇」がウクライナ軍による…

  • 9

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中