最新記事
中東

ハマスに続きイスラエルを攻撃するレバノンの武装勢力「ヒズボラ」とは何か

2023年10月17日(火)18時27分
ヒズボラのメンバー

パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルが戦闘状態に入ったことを受けて、レバノンの親イラン組織ヒズボラがこの数日、イスラエルと国境付近で砲火を交わし、紛争拡大の恐れが高まっている。写真は4月、ベイルート近郊で、指導者ナスララ師の発言を聞くヒズボラのメンバー(2023年 ロイター/Aziz Taher)

パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルが戦闘状態に入ったことを受けて、レバノンの親イラン組織ヒズボラがこの数日、イスラエルと国境付近で砲火を交わし、紛争拡大の恐れが高まっている。

ヒズボラについて起源や戦闘能力、影響力など基本情報をまとめた。

ヒズボラの起源

イラン革命防衛隊がレバノン内戦(1975─90年)さなかの1982年に創設した。イランは79年のイスラム革命を他の中東諸国に広げようとしており、ヒズボラ創設はこの一環で、82年のイスラエル軍によるレバノン侵攻に対抗する目的もあった。

宗派がイランの主流と同じイスラム教シーア派で、レバノンのシーア派を対象に勧誘活動を行った。当初は日陰的な一派にすぎなかったが、その後レバノン政府に大きな影響力を持つ武装勢力に成長。米国など西側諸国の一部からテロ組織に指定されている。

戦闘能力

レバノン内戦後、他のグループが武装解除したのに対し、ヒズボラはシーア派が多数を占めるレバノン南部を占領していたイスラエル軍と戦うために武器を保持し続けた。長年にわたるゲリラ戦後の2000年にイスラエルは撤退した。

ヒズボラが軍事力の充実ぶりを見せつけたのは2006年。イスラエルに侵入して兵士2人を誘拐し、他の兵士も殺害した後、イスラエルと5週間にわたり交戦した。

ヒズボラはこの紛争中、イスラエルに数千発のロケット弾を撃ち込み、レバノンで1200人、イスラエルで158人が死亡した。レバノン側の死者の大多数は民間人で、イスラエル側はほとんどが兵士だった。

その後はイランと親密な関係にあるシリアに派兵され、アサド大統領が主導するイスラム教スンニ派の反体制勢力との戦闘を支援し、勢力を伸ばした。

ヒズボラは、精密ロケットや無人機などの兵器を備え、イスラエル全土を攻撃できると豪語している。また、指導者ナスララ師は2021年、10万人の戦闘員がいると述べている。

イランから武器と資金の提供を受けており、米国はイランからの資金供与が最近では毎年数億ドルに上ると推定している。

【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪賃金、第1四半期は予想下回る+0.8% 22年終

ビジネス

TSMC、欧州初の工場を年内着工 独ドレスデンで

ビジネス

ステランティス、中国新興の低価格EVを欧州9カ国で

ビジネス

午前の日経平均は続伸、米株高で 買い一巡後は小動き
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 4

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 9

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 10

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中