最新記事

新型コロナウイルス

なぜ今になって感染者数「過去最多」? 中国のゼロコロナはまだまだ終わらない

Is There an Endgame?

2022年11月30日(水)17時24分
ジェームズ・パーマー(フォーリン・ポリシー誌副編集長)
防疫業務に携わる北京市民

防疫業務に携わる若者たちが電動自転車で北京の街を駆け抜ける(11月21日) THOMAS PETERーREUTERS

<1日の新規コロナ感染者数が過去最多を記録した中国。厳しい規制や隔離政策への不満が爆発し始めた>

中国生まれの古い暦に「二十四節気」がある。生き物が冬籠もりから目覚める「啓蟄」、暑さが本格的になる「小暑」、露が冷気により霜となって降り始める「霜降」など、1年を24の季節で表す。

だが中国は、これを「新型コロナ暦」に変えるべきだろう。例えば「夏希(夏の希望)」「省封(省全体のロックダウン)」「冬波(冬の感染拡大)」といった季節の呼び名のほうが、良くも悪くもピンとくるはずだ。

11月上旬の「偽緩(偽りの制限緩和)」に続いて訪れたのは、予想どおり「新緊(新たな規制強化)」の季節だ。10月の第20回中国共産党大会の後、ゼロコロナ政策緩和の期待が高まったが、最近の感染拡大でその可能性は消えた。

中国の新規感染者数は11月24日に3万2000人以上を記録し、前日の最多記録を更新した。北京などの大都市では再び公共施設を閉鎖し、移動の自粛を求めている。

■【動画】従業員の大量「逃亡」動画が世界で話題に...中国の工場「封鎖」パニック

大規模検査も再開された。検査官がいきなり家にやって来たり、集合住宅の住民が朝早く一斉に検査されたりする。陽性者はもちろん、濃厚接触者や偽陽性者も隔離の対象なので、中国の隔離施設はさらに過密状態になっている。

ワクチン計画の失敗と国家権力の限界

この新たな季節の到来に振り回された都市もある。河北省石家荘市は、実験的にコロナ規制を撤廃するという噂が流れたため、他地域から警戒されて住民の市外への移動が難しくなった。結局、規制と大規模検査が再導入された。

中国政府が規制緩和を恐れる理由は、公式の統計にも見つかる。60歳以上のワクチン接種率が低いことだけではない。重症化リスクが最も高い80歳以上では、初回のワクチン接種を受けた人が約50%、2回目以降の接種を受けた人は約20%にとどまっている。深刻な感染拡大が起これば、多くの高齢者が命を落とす。

高齢者のワクチン接種が進まない状況は、接種計画の戦略ミスと、国家による強制力の限界を示すものだった。政府は当初、重症化しやすい高齢者よりも就労年齢層を優先する接種計画を進めていた。やがて「高齢者には危険な副反応を引き起こす」という見方が広がり、接種を避ける高齢者が増えた。

さらに中国の高齢者は地方に多く、住んでいる町を出ることもめったにない。地方在住者はワクチンを接種していなくても、不便がない。だから政府がさまざまな手を打っても、高齢者のワクチン接種率はほとんど上がらない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアとの戦争、2カ月以内に重大局面 ウクライナ司

ビジネス

中国CPI、3月は0.3%上昇 3カ月連続プラスで

ワールド

イスラエル、米兵器使用で国際法違反の疑い 米政権が

ワールド

北朝鮮の金総書記、ロケット砲試射視察 今年から配備
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加支援で供与の可能性

  • 4

    ウクライナの水上攻撃ドローン「マグラV5」がロシア…

  • 5

    過去30年、乗客の荷物を1つも紛失したことがない奇跡…

  • 6

    「少なくとも10年の禁固刑は覚悟すべき」「大谷はカ…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 9

    「未来の女王」ベルギー・エリザベート王女がハーバー…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中