最新記事

ミャンマー

ミャンマー拘束の久保田さん、解放のカギは? 中国にらみ難しい日本政府の立場

2022年10月11日(火)12時05分
セバスチャン・ストランジオ
久保田徹さん

拘束された久保田の早期解放を訴える支援者の記者会見(今年7月、東京) ISSEI KATOーREUTERS

<ジャーナリストの久保田徹氏は、ミャンマー軍事政権への抗議デモの撮影中に当局に拘束され、裁判で禁固刑を言い渡された>

またしても外国人のジャーナリストがミャンマー軍事政権の恣意的な司法の標的になった。国軍の統制下にあるミャンマーの裁判所は10月5日、日本人のドキュメンタリー作家、久保田徹に禁錮刑の判決を言い渡した。

久保田は7月30日、ミャンマーの最大都市ヤンゴンで軍事政権に対する抗議デモの様子を撮影していて、治安当局に身柄を拘束された。5日の判決では、扇動罪で3年、電子通信に関する罪で7年の禁錮刑が言い渡された。出入国管理法違反に関する裁判はまだ続いている。

昨年2月のクーデターで実権を掌握した国軍は、国内外のジャーナリストに対する締め付けを強めてきた。

これまでに12以上の報道機関が閉鎖に追い込まれたほか、少なくとも142人のジャーナリストが逮捕されている。このうち57人は、曖昧で恣意的な容疑により現在も身柄を拘束されたままだ。報道機関への締め付けは、軍事政権への抵抗運動が活発になるのに伴い、ますます激しくなってきている。

現地のメディアによると、今回の判決で久保田に言い渡された2つの禁錮刑は、同時に執行が開始される見通しだという。つまり、禁錮の期間は7年ということになる。しかし、実際に久保田が収監されるかは分からない。久保田の釈放があるか否かが今後の焦点になる。

これまでのパターンでは、拘束された外国人ジャーナリストは、刑期が満了する前に釈放されてきた。アメリカ人ジャーナリストのネーサン・マウン、ダニー・フェンスター、ポーランド人ジャーナリストのロバート・ボツィアガ、そして日本人ジャーナリストの北角裕樹の場合がこれに該当する。

北角氏の時のような「配慮」はあるか?

軍事政権に対する抗議デモを取材していた北角は、虚偽のニュースを拡散したとの容疑で昨年4月に逮捕されたが、5月に解放された。

軍事政権は北角の解放に関して、「ミャンマーと日本のこれまでの友好関係と今後の2国間関係を考慮し、また、日本政府の特使(笹川陽平・日本財団会長)からの要請に基づいて」判断したとしている。

問題は、久保田にも同様の配慮がなされるかどうかだ。日本政府は多くの欧米諸国に比べてミャンマーの軍事政権に対する批判を抑制し、忍耐強い水面下の外交努力を重んじてきた。しかし、ミャンマー情勢の悪化に伴い、日本政府も軍事政権との関与を継続することを次第に正当化しにくくなってきている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

世界最大級のCO2回収・貯留施設稼働、アイスランド

ビジネス

中国杭州市、住宅規制を撤廃 ハイテク企業の人材増で

ビジネス

米GM、「シボレー・マリブ」生産終了へ EVに注力

ワールド

中国輸出、4月は予想通り前年比+1.5% 輸入は8
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必要な「プライベートジェット三昧」に非難の嵐

  • 3

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 4

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 5

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食…

  • 6

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 7

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 8

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 9

    ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

  • 10

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 8

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 9

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 10

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中