最新記事

保険

北京冬季五輪に関係する保険業界関係者、視線はウクライナ国境へ

2022年2月4日(金)17時11分
北京冬季五輪の聖火リレーのトーチ

北京冬季五輪に関する保険を手掛ける保険会社にとって、最大のリスクはロシアとウクライナの間で戦争が勃発して各国チームが撤退したり、選手が出場をキャンセルしたりする事態だ。写真は北京で2日に行われた聖火リレーの様子(2022年 ロイター/Florence Lo)

北京冬季五輪に関する保険を手掛ける保険会社にとって、最大のリスクはロシアとウクライナの間で戦争が勃発して各国チームが撤退したり、選手が出場をキャンセルしたりする事態だ。

五輪は常に、保険業界にとって大きなビジネス機会であると同時に、頭痛の種でもある。

2020年に新型コロナウイルスの感染拡大で東京五輪が1年延期された際、保険会社が東京都の組織委員会に支払った保険金は数億ドルに上ったと、複数の業界筋は話している。ホテルや会場の再予約など、各種コストをカバーするものだった。

4日開幕の北京冬季五輪で保険会社と組織委員会は、選手が新型コロナに感染して出場できなくなるリスクにも増して、ウクライナ国境付近でロシア軍が部隊を増強していることを警戒している。

開戦となれば複数の国々がチームを引き揚げかねない。つまり、チームや放送局は選手の欠場に伴う保険金の支払いを請求する可能性がある。

保険ブローカー、ハウデンの幹部、ダンカン・フレーザー氏は「北京大会に関する最大の懸念は政治リスクだろう」と言う。「保険会社が注視するのはウクライナ情勢だ」

IOCのかける保険料は?

2016年のリオ夏季五輪ではジカ熱の影響が懸念され、2018年の平昌冬季五輪でも戦争のリスクが注目されたが、結局は両大会とも滞りなく実行された。

アージェンタ・プライベート・キャピタルのシニア調査アナリスト、ベン・シェパード氏は「リスク・保険業界は、北京大会が計画通りに進むよう祈り続けるだろう」と語った。

最近の夏季五輪では通常、総額30億ドルほどの保険金がかけられているとアナリストは推計している。

関係筋によると、国際オリンピック委員会(IOC)は毎回の夏季五輪で8億ドル前後の保険に加入するが、夏季よりも小規模な冬季五輪の保険加入額はもう少し小さいかもしれない。

開催都市の組織委員会や、米オリンピック委員会のような国の委員会、放送局などその他のステークホルダーも、中止や暴動などのリスクに備えて保険に加入する。

北京冬季五輪を巡っては、米国を初めとする多くの国々が中国の人権侵害に抗議して外交ボイコットを発表するなど、開催前から緊張が高まっていた。これに伴うホテルその他のキャンセルが、保険契約にどの程度影響したかはまだ明らかになっていない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、ウクライナ北東部で大規模攻撃準備も 米は支

ビジネス

FRB当局者内の議論活性化、金利水準が物価抑制に十

ワールド

ガザ休戦合意へ溝解消はなお可能、ラファ軍事作戦を注

ワールド

ガザ休戦合意に向けた取り組み、振り出しに戻る=ハマ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 2

    「少なくとも10年の禁固刑は覚悟すべき」「大谷はカネを取り戻せない」――水原一平の罪状認否を前に米大学教授が厳しい予測

  • 3

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加支援で供与の可能性

  • 4

    過去30年、乗客の荷物を1つも紛失したことがない奇跡…

  • 5

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 6

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 9

    「一番マシ」な政党だったはずが...一党長期政権支配…

  • 10

    「妻の行動で国民に心配かけたことを謝罪」 韓国ユン…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 5

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 6

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 7

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中