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無責任で偏った韓国メディアの「表現の自由」を問う試み

Tackling Fake News

2021年11月24日(水)17時05分
ヒェジン・キム(シンガポール国立大学政治学部講師)

「報道の被害者」には選挙で選ばれた政治家もいる。公人に目を光らせるのはメディアの重要な仕事だが、その影響力で大量にスキャンダルをでっち上げて、一義的に有権者に対して説明責任のある公人を失脚させることもできる。ニューヨーク・タイムズ紙ソウル支局長のチェ・サンフンによれば、「韓国の新聞やソーシャルメディアで裏付けの乏しい腐敗の記事を目にしない日はほとんどない」と言う。

こうしたスキャンダル乱造の政治的駆け引きのなかで、有力かつ無責任なメディアグループは、「表現の自由」を建前に、説明責任という民主主義の制度を放棄している。その結果、特定の利益団体が、非民主的な方法で、自分たちに不利な法案を支持する議員を失脚させ、法案成立を阻止する恐れもある。

今回のような議論は韓国以外でも行われるべきだ。全てのメディアが永遠に独立した機関として民主主義を無条件に向上させる時代は過ぎ去った。世界はメディアと民主主義の関係を変える独創的な試みを必要としている。

韓国の反フェイクニュース法案は、デマの政治的拡散に対する最善の解決策ではないかもしれない。それでも堂々たる民主国家による、世界的な問題への取り組みではある。一考の価値あり、だ。

©2021 The Diplomat

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