最新記事

エネルギー

日米英中韓、石油備蓄を放出 消費国か初の協調で価格抑制へ

2021年11月24日(水)09時35分
アメリカの戦略石油備蓄基地

米ホワイトハウスは、石油価格の抑制に向け、戦略石油備蓄から5000万バレル放出すると表明した。米テキサス州で2016年6月撮影(2021年 ロイター/Richard Carson)

米ホワイトハウスは23日、日本や中国、インド、韓国、英国と協調し、石油価格の抑制に向け、戦略石油備蓄を放出すると発表した。米政府高官によると、主要石油消費国が協調で放出するのは初めて。

米国は5000万バレル放出する。12月中旬から下旬に市場に供給される見込みという。備蓄の放出は貸与と売却の形で実施する。3200万バレル分は今後数カ月にかけ、石油会社に貸与される。1800万バレル分は売却に充てられ、議会がすでに承認している売却を加速する方針とした。

米政府高官は「われわれはパートナー国と協議を続けていく。バイデン大統領は必要に応じ、追加行動を取る用意が整っており、他国と協調して全権を行使する用意がある」と語った。

共同通信など日本のメディアは、日本の国家備蓄の放出はまず数日分になる見通しと伝えている。国家備蓄の余剰分を市場に放出する。

世界3位の石油輸入国インドは、戦略備蓄から500万バレルの石油を放出すると表明した。

韓国は放出量や時期については、米国や他の同盟国との協議後に決定するとした。

米政権は石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなどの非加盟国で構成する「OPECプラス」に対し、十分な原油供給量を維持するよう繰り返し求めてきたものの、これまでに追加増産は見送られてきた。OPECプラスは12月2日に会合を開く。

キャピタル・エコノミクスのチーフ・コモディティ・エコノミスト、キャロライン・ベイン氏は「価格引き下げには十分な規模ではなく、OPECプラスが増産ペースを落とすきっかけとなれば逆効果だ」と指摘した。

ユーラシアグループのHenning Gloystein氏は「今回のこうした動きは、主要石油消費国とOPECプラスの間で政治的緊張が高まっていることを示しており、石油価格が今後大幅に変動することを示唆している」と述べた。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・新型コロナが重症化してしまう人に不足していた「ビタミン」の正体
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...



今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

豪政府のガス開発戦略、業界団体が歓迎 国内供給不足

ビジネス

日経平均は反落、朝高後軟調 3万9000円再び下回

ビジネス

午後3時のドルは156円台でじり高、1週間ぶり高値

ワールド

台湾総統就任式、中国が日本議員出席に抗議 「協調精
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 4

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    9年前と今で何も変わらない...ゼンデイヤの「卒アル…

  • 7

    ベトナム「植民地解放」70年を鮮やかな民族衣装で祝…

  • 8

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 9

    服着てる? ブルックス・ネイダーの「ほぼ丸見え」ネ…

  • 10

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 5

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 8

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 9

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 10

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中