最新記事

東南アジア

フィリピン軍、反政府組織NPA司令官を殺害 報復攻撃に警戒、治安当局が呼び掛け

2021年11月4日(木)08時32分
大塚智彦
「フィリピン共産党(CPP)」の武装部門「新人民軍(NPA)」最高幹部ジョージ・マドロス(別名カ・オリス)司令官

フィリピン軍に殺害された反政府組織「フィリピン共産党(CPP)」の武装部門「新人民軍(NPA)」の最高幹部ジョージ・マドロス司令官  GMA Regional TV / YouTube

<反政府組織の司令官の死は平和を意味するのか、それとも......>

フィリピン軍は10月30日、南部ミンダナオ島で反政府組織「フィリピン共産党(CPP)」の武装部門である「新人民軍(NPA)」との戦闘があり、最高幹部の一人で全国作戦司令部のジョージ・マドロス(別名カ・オリス)司令官を殺害したことを明らかにした。

30日午前、南部ミンダナオ地方のブキドノン州でNPAが住民に対して工作活動をしているとの情報を得て、陸軍の部隊が急きょ現地に向かい、戦闘になったと地元メディアなどは伝えた。

マドロス司令官は比共産党の統一戦線組織である「民族民主戦線(NDF)」のミンダナオ方面担当スポークスマンも兼務していた最高幹部の一人。NPAにとっては大きな痛手となり、軍にとっては大成果を上げたことになる。

軍のラモン・ザガラ報道官は10月31日に「マドロス司令官の死はNPAの今後の活動に大きな影響を与えることは間違いなく、国民に対するNPAのテロ活動は大きく変化することになるだろう」との見方を地元紙に明らかにした。

そのうえで治安当局は今後NPAによる報復攻撃の可能性があるとして、全国での警戒を呼び掛ける事態となっている。

攻撃には戦闘機も参加

地元紙などによると軍とNPAとの戦闘は、駆け付けた軍部隊が約30人のNPAメンバーに対して攻撃しようとしたところ、前面に地雷原があったため急きょ戦闘機を参加させて上空から先制攻撃を行ったとしている。

その後部隊が前進したところNPAのメンバー2人の遺体を発見し、ライフル銃などの武器を押収した。そして遺体の一人がマドロス司令官と判明し、その地面に横たわる遺体の写真が地元紙では生前の活動中のマドロス司令官の写真と並べて掲載された。

軍によるとマドロス司令官はこれまで兵士や民間人対象に複数の殺害事件や器物損壊、強盗などの犯罪に関与しており、治安当局から重要人物として手配され、行方を追われる身だったという。

ザガラ軍報道官はNPAの残る幹部やメンバーに対して「国の平和と安定のために降伏するよう勧告する」として投降を呼びかけた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国主席「中米はパートナーであるべき」、米国務長官

ビジネス

円安、物価上昇通じて賃金に波及するリスクに警戒感=

ビジネス

ユーロ圏銀行融資、3月も低調 家計向けは10年ぶり

ビジネス

英アングロ、BHPの買収提案拒否 「事業価値を過小
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 8

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中