最新記事

アフガニスタン情勢

アフガン自爆テロ、ISからシーア派を守りたいイランからの警告

Iran Warns Against 'Divisive Schemes' in Afghanistan as ISIS Wages War Across Ethnic Lines

2021年10月18日(月)18時31分
トム・オコナー
自爆テロが起きたカンダハルのモスク

15日、ISによる自爆攻撃で50人以上が犠牲になったアフガニスタン南部カンダハルのシーア派モスク WION-YouTube

<連続するアフガニスタンでのテロにISが犯行声明を出す理由は何か――それはタリバンを陥れ、イランを挑発する計画かもしれない>

イラン外務省は本誌に対し、アフガニスタンの分裂をねらう過激派組織イスラム国(IS)の計画について警告を伝えた。ISは異なる民族の襲撃者を使って同国のシーア派イスラム教徒コミュニティに対する新たな攻撃を企んでいるという。

アフガニスタンとパキスタンで活動するISの分派、イスラム国ホラサン州(ISIS-K)は、10月15日にアフガニスタン南部カンダハルのシーア派系モスクで起きた爆発の犯行を認める声明を出した。

礼拝中に行われた自爆テロで、50人を超える死者が出た。犯人として特定されたのは、アナス・アル=ホラサニとアブ・アリ・アル・バロチで、いずれもイラン東部・アフガニスタン、パキスタンを含む旧地名である「ホラサン州」や、アフガニスタン、イランと接するパキスタンの「バロチスタン州」にちなんだ呼び名とみられる。


この自爆テロの1週間前に、アフガニスタン北部クンドゥズ州にあるシーア派モスクで起きた爆発では、死者は100人にも達した。ISIS-Kはこの自爆テロについても犯行を認め、実行犯としてモハメド・アル=ウイグリリの名を挙げた。これは中央アジアのウイグル人少数民族とのつながりを示す名だ。

イランがISを非難

10月3日には、首都カブールにあるスンニ派イスラム教のモスクが攻撃された。現在アフガニスタンを支配しているタリバンは、この混乱状態をなんとか抑えようとしている。

一方、シーア派イスラム教国として世界最大の隣国イランは、特定のイスラム教徒をイスラム教の理想から逸脱した「背教者」とし、存在を認めないISのような「タクフィール主義者」を非難するメッセージを出した。

イラン外務省は本誌にあてた声明のなかで、「タクフィール主義のテロリストたちを操り、アフガニスタンで金曜礼拝を行っていた多くの抑圧された人々の血を流した連中こそイスラム教の敵だ」と述べた。

同省は「多くの礼拝者の死と負傷をもたらしたカンダハルのファテミー・モスクにおけるテロ攻撃を強く非難する」と述べた。また「殉教者の名誉ある家族と親愛なるアフガニスタンの人々に哀悼の意を表し、遺族に忍耐と神聖な報酬を、そしてこの非人道的な犯罪で負傷した人々の迅速な回復を祈る」。

そして、イラン政府もイスラム教徒の共同体を意味する「ウンマ」に警告を発した。

「外務省は分裂を引き起こすイスラム共同体の敵による陰謀を警告し、シーア派とスンニ派の団結の必要性と、イスラムの名の下に暴力と過激主義を拒絶する必要性を強調する」と同省は述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ノボノルディスク、「ウゴービ」の試験で体重減少効果

ビジネス

豪カンタス航空、7月下旬から上海便運休 需要低迷で

ワールド

仏大統領、国内大手銀の他国売却容認、欧州の銀行セク

ワールド

米国務長官がキーウ訪問、ウクライナとの連帯示す
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子…

  • 5

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「人の臓器を揚げて食らう」人肉食受刑者らによる最…

  • 9

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 10

    自宅のリフォーム中、床下でショッキングな発見をし…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中