最新記事

中国停電

世界を揺るがす中国停電の正体は習近平への忠誠のしるし

China’s Busiest Manufacturing Areas Ordered to Stop Production

2021年9月30日(木)17時02分
レベッカ・クラッパー
瀋陽

瀋陽では突然の停電で交通が大混乱に陥る事態も起きている Toby Melville-REUTERS

<CO2削減で世界のリーダーを目指す習のノルマに応えるために強引な計画停電を実施。生産力の低下で世界経済に影響が及ぶ懸念も>

このところ中国各地で停電が頻発している。特に製造業が盛んな地域では、当局の指示により最長で1週間も電力供給がストップし、工場が軒並み操業停止に陥る事態になっている。

背景には、中央政府が掲げる二酸化炭素(CO2)排出量の削減目標を達成するため、地方当局が躍起になっているという事情がありそうだ。中国の製造業が生産停止に陥れば、スマートフォンなどの製品が世界的に品薄になり、クリスマス商戦を控えたこの時期、コロナ禍からの復活を目指す世界経済全体に影響が及びかねない。

中国では電力消費の伸び率が例年の2倍近くに上り、政府は節電の旗を振り始めた。中国共産党が気候変動対策の一環としてGDP単位当たりのエネルギー消費量である「エネルギー強度」の削減を重視している。

都市部でも政府の節電政策による停電が発生し、SNSでは「何とかしてくれ!」という声が飛び交っている。

以下はAP通信が伝えた詳細。

スマホの明かりで食事をする庶民

中国各地で電力供給がストップするなか、9月29日東北部の住民はスマートフォンの明かりを頼りに朝食をとり、商店主は自家発電機をフル稼働させて営業を行った。

中国メディアは、石炭価格の高騰と電力需要の急増のダブルパンチのせいで電力不足になっていると報道しているが、エコノミストによれば本当の理由は政治的なものだ。中央政府が掲げるCO2削減目標を達成するため、地方当局は大幅な節電を迫られている。

東北部の最大都市・瀋陽で飲食店を経営するLi Yufengは午前7時半に停電するとの通告を受け、電動自転車の電池を使って湯を沸かし、麺をゆでる準備を整えた。その日はいつもより早めに6時から仕込みにかかり、チキンやソースなどを用意した。

「多少は売上に響くが、大したことはない」と、Liは話す。薄暗い店内で、客はスマフォの明かりで食事していた。

ここに来て急に停電が頻発するのはなぜか。実は10月12、13日に南部の雲南省昆明で、生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)がオンライン形式で開催されることになっている。この会議のホストを務めるのは習近平(シー・チンピン)国家主席。自国が排出削減と省エネの目標を達成していなければ、習の面子が立たない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ブラジル経済活動指数、第1四半期は上昇 3月は低下

ビジネス

マイクロソフト、中国の従業員700人超に国外転勤を

ワールド

アルゼンチン、4カ月連続で財政黒字達成 経済相が見

ワールド

トランプ氏、AUKUSへの支持示唆 モリソン前豪首
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 8

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 9

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中