最新記事

日本政治

菅首相、就任1年で退陣へ コロナ感染歯止めかからず支持率低迷

2021年9月3日(金)14時53分
菅義偉首相

菅義偉首相(写真)は、自民党の総裁選挙に立候補しないことを表明した。写真は7月都内での代表撮影(2021年/ロイター)

菅義偉首相は3日、自民党の総裁選挙に立候補しないことを表明した。デジタル化や環境対策の推進を掲げてきたが、新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからず、衆議院選挙前に党内で総裁交代論が強まる中、就任から1年で退陣することとなった。

菅首相は3日午後に官邸で会見し、「先ほど開かれた自民党役員会で、新型コロナ対策に専任したいという思いの中で、自民党総裁選には出馬しないと申し上げた」と語った。膨大なエネルギーが必要なコロナ対策と選挙活動の両立はできないとし、「感染拡大を防止するため(コロナ対策に)専任したいという判断をした」と述べた。

役員会に出席した複数の党幹部によると、菅氏は9月末の任期満了までは職務を続ける。6日に予定していた党役員と内閣の人事は実施しない。菅首相は3日の役員会と総務会で、人事について一任を取り付ける考えだった。

二階俊博幹事長は役員会後、記者団に対し「正直、びっくりしている」とした上で、「考えに考えた末に決断されたのだと思う」と述べた。不出馬の意向はこの日午前に菅首相から聞いたという。菅氏から後継指名の話は「ない」とした。

9月17日告示・29日投開票で行われる自民党総裁選は、予定どおり実施する。唯一出馬を表明している岸田文雄元政調会長は記者団に対し、まずは情報を確認したいとの考えを示した。出馬をいったん断念した下村博文政調会長は、「改めて同志と相談する」と語った。

菅首相はかねてからコロナ対策を最優先に掲げつつも、総裁選に出馬する考えを繰り返し表明していた。しかし、報道各社の世論調査で内閣支持率は3割を切る水準に低迷。自民党が8月後半に実施した調査では、10月に任期満了を迎える衆議院の選挙で40─70議席減るとの予測が出た。若手・中堅議員を中心に、衆院選で勝てる顔が必要だとして総裁交代を求める声が強まっていた。

ニュースで知ったという梶山弘志経済産業相は閣議後会見で、「大変残念だと思っている」とした上で、「空白がないようにしっかり行政はつないでいかなければならない」と語った。

菅首相の出馬断念の情報が伝わると、東京の株式相場は上昇して反応した。

*内容を追加しました。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・新型コロナが重症化してしまう人に不足していた「ビタミン」の正体
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアとの戦争、2カ月以内に重大局面 ウクライナ司

ビジネス

中国CPI、3月は0.3%上昇 3カ月連続プラスで

ワールド

イスラエル、米兵器使用で国際法違反の疑い 米政権が

ワールド

北朝鮮の金総書記、ロケット砲試射視察 今年から配備
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加支援で供与の可能性

  • 4

    過去30年、乗客の荷物を1つも紛失したことがない奇跡…

  • 5

    「少なくとも10年の禁固刑は覚悟すべき」「大谷はカ…

  • 6

    ウクライナの水上攻撃ドローン「マグラV5」がロシア…

  • 7

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 8

    礼拝中の牧師を真正面から「銃撃」した男を逮捕...そ…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中